大陽日酸,東京農工大学,ノベルクリスタルテクノロジーは,HVPE法による6インチウエハー上の酸化ガリウム成膜に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
酸化ガリウム(β-Ga2O3)は,炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)と比べてさらに大きなバンドギャップを持つため,β-Ga2O3によるトランジスタやダイオードは高耐圧や高出力,高効率(低損失)といった優れたパワーデバイス特性を備えるものとして期待されている。
β-Ga2O3パワーデバイスの開発は日本が世界をリードしており,小口径4インチβ-Ga2O3エピウエハーの製造・販売が行なわれている。このエピ成膜のベースとなるβ-Ga2O3ウエハーは SiCやGaNと異なり,バルク結晶の育成が速い融液成長で製造可能なことから,大口径・低価格なβ-Ga2O3ウエハーを得やすくパワーデバイスの低価格化に有利となる。
しかし,β-Ga2O3の成膜に採用されているHVPE法は安い原料コストや高純度成膜が可能である反面,成膜装置は小口径(2インチまたは4インチ)かつ枚葉式のものしか実用化されておらず,大口径(6インチまたは8インチ)でバッチ式の量産装置の実現が不可欠とされてきた。
今回研究グループは,6インチ枚葉式HVPE装置を開発し,世界で初めて6インチテストウエハー(サファイア基板)上へのβ-Ga2O3成膜に成功した。また,成膜条件の最適化や独自の原料ノズル構造の採用により,6インチテストウエハー上におけるβ-Ga2O3成膜の実証,およびβ-Ga2O3膜厚分布±10%以下を達成するなど面内で均一な成膜が可能であることも確認した。
この成果で確立した大口径基板への成膜技術やハードウエアの設計技術によりβ-Ga2O3成膜装置のプラットフォームを構築できるため,大口径バッチ式量産装置の開発を大きく進展させることが可能となった。これにより,β-Ga2O3成膜プロセスおよびデバイスの適用による消費電電力削減によって,2030年時点で21万kL/年程度の省エネルギー効果量が見込まれるという。
大陽日酸はβ-Ga2O3成膜向け量産装置の開発を継続し,今後は6インチβ-Ga2O3ウエハーを用いたエピ成膜を行ない,β-Ga2O3薄膜の電気特性評価や膜中に存在する欠陥評価を通して,高品質なβ-Ga2O3エピ成膜技術の開発を実施する。また,β-Ga2O3エピウエハーの量産技術を確立した後,2024年度に量産装置の製品化を目指すとしている。