東工大ら,高温駆動光学デバイスになる液晶を発見

東京工業大学と神奈川県立産業技術総合研究所は,ボロフェンに類似した,ホウ素の単原子層からなる新物質(ボロフェン類似物質)が液晶材料となることを発見し,高温で駆動できる光学デバイスになることを実証した(ニュースリリース)。

流動性と結晶性を兼ね備える液晶素子の開発は,これまで有機物から合成されるものに限られていた。有機物,特に有機分子から作られる液晶は,分子設計によって特性を制御できる可能性がある一方で,液晶として駆動できる温度範囲が限られてしまうことが問題になっていた。

こうした液晶を無機物で合成できれば,安定性などが本質的に異なる新しい材料が実現すると考えられるが,通常の無機物は剛直であり,液晶としての駆動は見込めなかった。

研究では,ホウ素単原子層物質であり,ポストグラフェン材料として期待されているボロフェンに着目。研究グループは以前の研究で,常圧大気下での簡便な方法によってその類似物質(化学ボロフェン)を合成することに成功していた。

この化学ボロフェンは一般的な分子とは異なり,二次元的に広がった大きな形状異方性を持っており,液体状態においても部分的な結晶性が保持されることから,液晶状態の発現が期待されていた。

研究グループは,開発していた分子から合成できる化学ボロフェンに加熱処理を行なうと結晶性が低下し,流動性が発現することで液晶になることを発見した。各種分析により,この液晶化がボロフェンの末端部位の脱水反応により引き起こされているこを明らかにした。

新たに開発した化学ボロフェンからなる液晶は,①構成元素が炭素を利用しない無機物であること,②構成要素が二次元原子層物質であること,の2点で通常よく知られている液晶とは大きく異なる。こうした特徴により,350℃の高温でも液晶状態が保持できることがわかった。

さらに実際に電圧をかけたところ,光学デバイスとして駆動でき,これまでに扱われてきた有機材料による液晶では動作出来ないような過酷な環境においても利用できることを確認した。

この研究で開発した無機材料からなる新しい液晶とその光学デバイスは,一般的な有機物からなるものとは安定性や耐熱性が本質的に異なるものであり,これまで動作が不可能であった高温で過酷な環境での利用が期待できる。さらにこの成果の基礎となる原子層物質の低分子からの合成は近年注目されており,構成元素の変更による様々な物性の発現も可能。

こうした新規物質は,液晶機能の利用だけでなく,様々な電子素子や吸着剤などへの応用も期待できる。さらにその液晶機能は,高温での動作を実現するだけでなく,二次元シートの配列を制御したFETなどのデバイス素子の開発にもつながるものだとしている。

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