東北大,量子構造に偶数分母の分数量子状態を発見

東北大学の研究グループは,典型的な半導体量子構造であるQPCにおいてセンターゲートを有する構造を用いることで,通常の高移動度(106cm2/Vs程度)GaAs/AlGaAsヘテロ構造上での特別な偶数分母状態(3/2状態)がQPCの中央付近に実現できることを世界に先駆けて確認した(ニュースリリース)。

分数量子ホール効果は,電子間の相互作用を反映した物理現象としてノーベル物理学賞の対象にもなったが,超高移動度のGaAs/AlGaAs系においては,通常の分数量子ホール状態と異なる偶数分母の分数量子ホール状態(例えば5/2状態)が発見されている。

この偶数分母状態は,その特別な特性からエラーに強い量子操作に応用できる可能性が示唆され,研究が活発化している。量子操作にはミクロスコピックな量子構造を用いる必要があるが,最近,107cm2/Vs を超える超高移動度の電子系で2μm×2μmの構造を実現し,周囲を5/3の分数状態にすると,このミクロスコピックな領域に3/2状態(対角抵抗Rdiagが17.2kΩになる状態)が現れることが確認され,新たな着目を集めている。

一方,半導体量子構造の中核を担う,数百ナノメータ以下の量子構造でこの振る舞いが出現するかどうかは不明だった。さらに,このような量子構造を有さない通常の系では偶数分母状態の発現には超高移動度が必要と考えられていたが,こうした量子構造で偶数分母状態を実現させるためにどこまで超高移動度が必要かについても分かっていなかった。

研究では,バックゲートで電子密度を正確に制御できる高移動度(超高移動度ではない)のGaAs/AlGaAsヘテロ構造の上にセンターゲートを有するQPCを作製し,中央部分の400nm×600nmの領域に,エラーに強い量子操作への期待が持てる偶数分母状態(3/2状態)が出現することを発見した。

これまでの偶数分母状態の研究は移動度が107cm2/Vsを超える超高移動度GaAs/AlGaAsヘテロ構造を用いたものに限られていた。今回,移動度が106cm2/Vs程度の通常の高移動度GaAs/AlGaAsヘテロ構造上に作製した量子構造で3/2状態が観測できることを世界で最初に確認し,これまでの常識を覆した。

通常の高移動度半導体の数百ナノメータ領域で偶数分母状態が実現されたことで研究グループは,偶数分母状態を用いたエラーに強い量子操作の研究,さらには量子操作の実用化に向けた応用研究の大きな加速が期待されるとしている。

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