北大ら,植物のCDKAが太陽光の情報を伝達と発見

北海道大学,石川県立大学,基礎生物学研究所,九州大学,理化学研究所,宮城大学らは,コケ植物を用いて細胞分裂に重要なタンパク質の新たな機能を発見することに成功した(ニュースリリース)。

私たちの体は細胞分裂を正しく繰り返して出来上がるが,細胞分裂は時々ミスを起こし,異常な細胞を産み出す。このような異常な細胞が,がん細胞として増殖を繰り返し死に至る。

体の中に2万種類以上もあるタンパク質の中でもPSTAIRE型サイクリン依存性キナーゼ(動物ではCDK1,植物ではCDKA)は,細胞分裂を正しく行なうために特に重要なタンパク質であり,この働きの異常は細胞のがん化など個体の死に直結する。

研究グループは,コケ植物を用いて,CDKAタンパク質をコードするCDKA遺伝子を取り除き,CDKAを持たないコケ植物の作成に成功した。この植物は光が当たった際に,異常な反応を示したことから,光の強さや色,光を受けた時に起こると知られている反応をさらに詳しく観察した。

その結果,コケ植物はCDKAを欠損させても死なないことを発見し,従来行なえなかったタンパク質の細胞分裂以外の働きの調査が可能になった。調査の結果,CDKAは細胞骨格を制御しながら光情報の伝達にも関与することを発見。CDKAは細胞分裂以外に,光合成に大切な光屈性や葉緑体の光定位運動という光の情報を伝達する部分でも極めて重要な役割をもつことを実証した。

またコケ植物だけでなく,アブラナ科の雑草であるシロイヌナズナでも同様の働きを持つことが判明したため,コケ植物に限らず多くの植物で共通した重要な機能である可能性が考えられるという。

動物のCDK1と植物のCDKAは,両者でアミノ酸配列がよく似ておりそれぞれの働きもよく似ていることから,研究グループでは,動物においてもCDK1が細胞骨格を制御し,細胞分裂以外の細胞内の様々な応答に重要な機能を持っている可能性が高いと考えている。

そのため,今後ヒトの研究においてもCDK1の新たな機能の発見や,CDK1が関わる病気の新たな治療法への可能性を広げることに繋がることが期待できるとしている。

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