慶大,透明材料に蛍光量子ドットをレーザーで生成

慶應義塾大学の研究グループは,レーザーパルスを透明高分子材料に集光照射することで,蛍光性を示すグラフェン量子ドット(Graphene Quantum Dots: GQDs)が生成されることを明らかにした(ニュースリリース)。

量子ドットは量子閉じ込め効果により蛍光を示すことから様々な用途での利用が期待されているが,広く知られている無機量子ドットは高価かつ毒性を示す可能性があり,その代替材料として環境に優しいグラフェン量子ドット(GQDs)が注目を集めている。

一般にGQDsはグラファイトのような黒鉛質炭素を分解することで生成するが,多量の生成が可能であるものの,生成には複数の工程が必要となる。また,デバイスとして用いる際には生成したGQDsを任意の場所に細密に配置する技術も必要で,基盤表面に二次元的に配置する技術の開発が進められてきた。

これまでに研究グループは,レーザーを用いた高分子材料の炭化と黒鉛化(レーザー誘起グラフェン,LIG)の技術に超短パルスレーザーを導入し,伸張性のポリジメチルシロキサン(PDMS)を前駆体として,難しいとされてきた高導電性のLIGが作製できることを示した。

さらに,植物由来のセルロースナノファイバーを前駆体として最高水準の導電性が得られることを実証し,再生可能資源をオプトエレクトロニクスデバイスに使用できる可能性を示している。

研究では,開発を進めている超短パルスレーザーによるLIG(UP-LIG)により,透明高分子材料であるPDMSの表面へ集光した超短パルスレーザーを照射して走査することで,レーザービームの軌跡に沿って描くように蛍光性GQDsを生成できることを明らかにした。

生成物にはナノスケールの黒鉛質炭素結晶が観察され,蛍光特性を示す黒色構造はGQDsにより構成されていることを確認した。GQDsの生成は構造作製時に用いるレーザーパラメータに依存するため,これをを変化させることで黒色構造の蛍光強度を調整することが可能だという。

このため,可視的には黒色だが紫外光を照射して励起するとGQDs生成場所のみ蛍光を示すQRコードなど,偽造防止コード作製の概念実証を示した。更に,この手法は多光子相互作用を活用したもので,研究では材料内部にGQDsの三次元的なパターニングに初めて成功した。

今回,伸張性のある透明高分子材料の表面および内部にGQDsが直接描画できることを実証した。研究グループは,レーザーパルス照射によるGQDsの生成過程が明らかになれば,生成GQDsの粒径と官能基の種類を変えることで蛍光波長を変化できるとしている。

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