筑波大ら,フィルム上に高性能半導体薄膜を合成

筑波大学,産業技術総合研究所,ゼノマックスジャパンは,耐熱温度の限られたプラスチックフィルム上で,集積回路に用いられるシリコン(Si)基板と同等のキャリア移動度をもつ半導体薄膜を合成するに成功した(ニュースリリース)。

低い合成温度でも高い性能を発揮できる有機物や酸化物をベースとした半導体薄膜をプラスチックフィルム上に形成することにより,ウェアラブルなセンサデバイスなどが実証されてきた。

しかし,これらの材料のキャリア移動度は,集積回路で用いられる単結晶シリコン(Si)基板と比べて一桁以上低く,プラスチックフィルムに高度な情報処理機能をもたせるには材料の革新が必要だった。

一方、ゲルマニウム(Ge)は最も古くから知られる半導体材料であり,Siを上回る高いキャリア移動度をもつ。近年,単結晶Ge基板をベースに構築したトランジスタは,単結晶Siトランジスタを凌駕する高い性能を得ている。

また,GeはSiよりも低温で結晶化できるため,ガラスやプラスチックフィルムなどの上に構築する薄膜トランジスタの材料としても有望だが,このような基板の上にGe薄膜を直接合成した場合,その品質は劣悪で,Ge本来の高いキャリア移動度を発揮することは難しかった。

研究グループは,Ge薄膜の結晶化過程を制御するとともに,耐熱プラスチックフィルムを用いた。200°C以下の低温で成膜したGe薄膜は,非晶質の膜になるが,その後に350°C以上での熱処理を行なうと固相成⻑が生じ,小さな結晶粒で構成される多結晶になる。

今回,プラスチックフィルム表面をGeトランジスタに用いる絶縁膜としても好適な酸化ゲルマニウム(GeOx)でコーティングしてGe薄膜の固相成⻑を行なうことで,多結晶Ge薄膜の結晶粒が劇的に拡大することを発見した。この現象は,固相成⻑中においてGeOx層からGe薄膜中へ適度に酸素が拡散し,界面核発生の頻度を低減したためと考えられるという。

さらに,耐熱プラスチックフィルムによって500°Cまでの高温プロセスが可能となったため,Ge薄膜の結晶欠陥を充分に低減することができた。こうした多結晶Ge薄膜の大粒径化・高品質化の結果,キャリア移動度は690cm2/Vsに達した。

これは,ガラスやプラスチックなどの非晶質基板上に直接合成されたあらゆる半導体薄膜の中で最高値であり,従来の集積回路に用いられる単結晶Si基板の正孔移動度をも凌駕することから,プラスチックフィルム上にSi集積回路に匹敵する情報処理機能を搭載できる可能性がある。

研究グループは今後,開発したフレキシブル・トランジスタの高速動作実証に向けて,さらに研究を進めるとしている。

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