東京大学,アストロバイオロジーセンター,仏ボルドー大学らは,すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラなどを用いて星形成領域を撮影した画像から,浮遊惑星の均質なサンプルとしては過去最大の,およそ100個もの天体を発見した(ニュースリリース)。
惑星程度の質量でありながらも,恒星を周回せずに宇宙空間をただよう「浮遊惑星」,あるいは「孤立惑星」と呼ばれる天体の存在が明らかになってきた。
このような浮遊惑星は質量が小さいために核融合を起こして自ら輝くことができず非常に暗いため,そのスペクトルを調べた例は限られており,直接観測による発見自体も散発的だった。
今回研究グループは,太陽よりずっと重い大質量星から太陽より軽い小質量星までが集団で生まれている,さそり座からへびつかい座にかけての星形成領域(約171平方度)に着目。世界中から過去20年間の可視光線および赤外線の画像約8万枚を集約し,2600万天体の位置,明るさ,固有運動を含むカタログ「DANCe」を作成した。
星の固有運動をさらに精密に求めた結果,この星形成領域にあると推定されるおよそ100個もの惑星質量と考えられる暗い天体をカタログから抽出した。近くに恒星が存在しない浮遊惑星を,一つの領域で均質に捉えた数としてはこれまでで最多となる。なお,惑星よりも重い天体まで含めると,この領域で3455個の天体が同定されている。
浮遊惑星を含む多数の生まれたばかりの「星」が同定されたので,この星形成領域で「どの重さの星が,それぞれ何個生まれるか?」,つまり「初期質量関数」と呼ばれる問題に迫ることができる。特に,太陽よりずっと軽い星の頻度はいまなお明らかではないという。
今回,太陽質量の10倍程度の重い星から,100分の1以下の浮遊惑星までの質量関数が初めて正確に求められた。この質量関数を,星形成の標準理論,つまり,分子雲が自己重力で収縮して恒星や褐色矮星が生まれるというモデルと比較すると,観測された浮遊惑星の数は,理論モデルを惑星質量まで外挿して予想される惑星数をはるかに超えることが示された。
この結果は,恒星が集団で生まれ星団を形成した際に,個々の若い恒星の原始惑星系円盤の中で生まれた惑星が,惑星同士の重力散乱などにより放出され,浮遊惑星の大部分が形成されたというシナリオを支持する。つまり,この領域の大多数の浮遊惑星は「星のように生まれた」のではなく,「惑星のように生まれた」ことが判明したとする。
研究グループは,今回発見された浮遊惑星が比較研究を行なう上で重要なサンプルとなるとしている。