基生研ら,赤色蛍光ドーパミンバイオセンサー開発

基礎生物学研究,デンマーク オーフス大学,生理学研究所,デンマーク コペンハーゲン大学は,赤色蛍光タンパク質を用いたドーパミンバイオセンサー「R-GenGAR-DA」の開発に成功した(ニュースリリース)。

ヒトの脳内では様々な神経伝達物質が協調して働くことで,記憶や情動など様々な脳機能を制御している。

それらの神経伝達物質の中でも,ドーパミンとノルエピネフリンは類似した化学構造を持ち,多くの脳機能において互いに関与しあっていると考えられている。そのため,いつどこでどれくらいこれらの神経伝達物質が放出されているかを調べることは脳機能の解明に必須だが,両者は構造的に非常に類似しているため,高感度,高時間的・空間的分解能で観察することは難しかった。

そこで研究グループは,蛍光タンパク質を使ったバイオセンサーに着目。蛍光タンパク質を使ったバイオセンサーは,時間的・空間的な分解能が高く,いくつかの神経伝達物質の検出法として近年盛んに開発されている。

このバイオセンサーは,神経伝達物質の受容体(Gタンパク質共役型受容体)に蛍光タンパク質を融合したもので,神経伝達物質を受容した際の受容体の構造変化を蛍光タンパク質の蛍光輝度の変化へと変換する。このバイオセンサーを任意の神経細胞に発現させることで,神経細胞外のドーパミンとノルエピネフリンを高い時間的・空間的な分解能で、同時に可視化することができると考えた。

しかし,既存のドーパミンバイオセンサーとノルエピネフリンバイオセンサーは緑色蛍光タンパク質をもとに作製されているため,ドーパミンとノルエピネフリンを区別して可視化することができない。また,ドーパミンとノルエピネフリンの化学構造が類似しているため,既存のドーパミンバイオセンサーはある程度ノルエピネフリンにも反応してしまう。

そこで,ドーパミンとノルエピネフリンを同時に可視化するために,既存の緑色蛍光ノルエピネフリンバイオセンサーと同時可視化可能なドーパミンに対して高い選択性を持つ赤色蛍光ドーパミンバイオセンサーの開発に着手した。

その結果,赤色蛍光タンパク質を用いたドーパミンバイオセンサー「R-GenGAR-DA」開発に成功。この赤色蛍光ドーパミンセンサーのドーパミンに対する高い選択性を利用し,既報の緑色蛍光ノルエピネフリンバイオセンサーと共に用いることで,ひとつの細胞でドーパミンとノルエピネフリンを同時に可視化することに成功した。

研究グループは,この赤色蛍光ドーパミンバイオセンサーについて,動物個体内でドーパミンをイメージングするためには,さらなる改良が必要だとしている。

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