キヤノンは,暗闇でもフルHD(約207万画素)を超える世界最高の320万画素のカラー撮影が可能な13.2mm×9.9mmの「超小型SPADセンサー」を開発した(ニュースリリース)。
SPADセンサーは,画素に入ってきた光の粒子(光子)を1つひとつ数える仕組み(フォトンカウンティング)により,1つの光子が雪崩のように増倍し,大きな電気信号を出力する。
CMOSセンサーは,溜まった光の量を測定する(電荷集積)ので,集めた光を電気信号として読み出す際に画質の低下を招くノイズも混ざってしまうが,SPADセンサーは仕組み上,読み出す際にノイズが入らないため,暗い所でもわずかな光を検出し,ノイズの影響を受けずに被写体を鮮明に撮影したり,対象物との距離を高速・高精度に測定したりすることができる。
開発したSPADセンサーは,画素内に光子を反射させる独自の画素構造により,有効画素面全体で効率よく光子を検出し利用できる。同一照度下において,一般的なCMOSセンサーの10分の1の画素面積で,同等の撮影が可能。光子の利用効率はほぼ100%で,6.39μmピッチでの画素の微細化と高感度の両立を実現した。
そのため,小さなデバイスにも搭載可能な超小型でありながら,近赤外線域を含む感度が大幅に向上し,星の出ていない闇夜よりも暗い0.002 luxの環境下において320万画素での動画撮影を実現。暗視や監視用のカメラにこのSPADセンサーを搭載することで,暗闇でも,あたかも明るい場所で撮影したかのように,明るい場所にて肉眼で見た色と同じ色で対象物の動きを捉えられるようになるという。
また,SPADセンサーは,100ピコ秒(100億分の1秒)レベルの非常に速い時間単位で情報を処理することができるため,光の粒のような,高速に動くものの動きをとらえることができる。フルHDを超える高解像度,わずかな光をとらえられる高感度性能に加え,この高速応答の特長を生かして,自動運転や医療用の画像診断機器,科学計測機器などに用いるセンサーとして幅広い活用が見込まれる。
同社は2022年後半より,自社のセキュリティ用ネットワークカメラ製品に搭載するSPADセンサーの生産を開始するとしている。