東大,天の川銀河の外縁部に予想外の構造を発見

天の川銀河の円盤をモルワイデ図法で表示し,画像をGIFで組み合わせたもの ©Laporte et al.

東京大学の研究グループは,欧州宇宙機関のガイア衛星の観測データを解析し,これまで知られていなかったフィラメント状の構造が円盤の外縁部に多数存在することを明らかにした(ニュースリリース)。

太陽系が属する天の川銀河は,分かっているだけでも約50個の衛星銀河に囲まれており,過去には多くの衛星銀河を飲み込んで進化してきた。

例えば,天の川銀河は過去に「いて座矮小銀河」と呼ばれる衛星銀河との衝突によって大きく擾乱され,影響を受けたと考えられている。さらにその以前には,「ガイア・ソーセージ」と呼ばれる衛星銀河が衝突した痕跡が発見され,天の川銀河と相互作用していたことも指摘されている。

天の川銀河には,恒星が分布したフィラメント状の構造が外縁部に見られるが,この構造は,天の川銀河が過去に様々な衛星銀河との衝突,合体した際に潮汐作用で生じた「潮汐腕」の痕跡であると予測されている。

これまでの研究で,円盤の外縁部にある「Anticenter Stream」と呼ばれるフィラメント状の構造は,約80億年以上前の星が多く含まれていることが明らかになっており,これはガイア・ソーセージとの衝突が起源であると考えられている。

研究グループは,欧州宇宙機関(ESA)のガイア衛星の観測データを解析し,天の川銀河の円盤の外縁部の新しい地図を作成した。ガイア衛星は天の川銀河の3次元地図の作成を目的としてESAが2013年に打ち上げた位置天文衛星で,900メガピクセルCCDによる106個のセンサーにより観測を行なっている。

研究グループは,個々の星の運動(固有運動)の測定結果を用いることで,塵の減光の影響のために,ほとんどこれまで調べられていなかった天の川銀河円盤の外縁部の星分布の3次元地図を調べることに成功した。

その結果,これまで知られていた天の川銀河の構造の全体像をより鮮明に描き出すことができた。加えて,天の川銀河の円盤の外縁部に,これまで知られていなかったフィラメント状の構造が多数存在することが明らかになった。膨大な数のフィラメント構造の存在は予想外であり,詳細な研究、解析が必要だという。

研究グループは既に調査を始めており,今後は超広視野多天体分光器PFSの分光観測によって,こうした構造にふくまれる恒星の起源やこの構造自体の成り立ちについて明らかにしていくとしている。

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