豊田中央研究所は,太陽光エネルギーを利用して,水とCO2のみから有用な物質を直接合成する人工光合成を,1m角サイズのセルにて実証し,このクラスで世界最高の太陽光変換効率10.5%を達成した(ニュースリリース)。
同社の人工光合成システム「MORLIE」は,半導体と分子触媒を用いた方式で,水の酸化反応とCO2の還元反応を行なう電極を組み合わせ,常温常圧で有機物(ギ酸)を合成する技術。2021年4月には36cm角サイズのセルにて,植物を大きく上回る太陽光変換効率7.2%(このクラスでは当時の世界最高)を達成している。
この技術を社会実装するためには,人工光合成セルの太陽光変換効率を低下させずに,さらに大型化することが必要だったが,技術的に困難とされていた。そこで研究グループは,基本原理はそのままに,太陽光にて生成した多量の電子を余すことなく使用し,ギ酸合成を効率的に行なうため,以下の改良を行なった。
①太陽電池で生成した電子を電極全面に行き渡らせるために,電気抵抗が低いチタン基板を採用
②ギ酸合成に必要な水素イオンを通し,ギ酸合成を妨げる酸素を通さない多孔質セパレータを採用し,酸化と還元電極の間に設置
この結果,1m角のセルにて,このクラスでは世界最高の変換効率10.5%を達成した。
同社では将来,工場等から排出されるCO2を回収し,この人工光合成にて再び資源化するシステムの実現を目指すとしている。