産総研ら,可視光光触媒の変換効率向上の条件を明確化

著者: sugi

産業技術総合研究所(産総研),人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem),徳島大学,京都大学,信州大学は,可視光で水を水素と酸素に分解する酸硫化物光触媒のY2Ti2O5S2について,太陽エネルギーから水分解反応エネルギーへの変換効率が実用化の目安となる10%を超えるために必要な条件を明確化した(ニュースリリース)。

650nm以下の太陽光を吸収して水を水素と酸素に分解するY2Ti2O5S2は,理論上では変換効率10%以上が期待できるが,現状の変換効率は1%以下であり,改良の指針が求められていた。

そこで研究グループはY2Ti2O5S2に対し,再結合で失われる光励起キャリアの割合を定量化し,変換効率向上の指針を得ようとした。まず,光励起キャリアの再結合過程を詳細に追跡するため,1ピコ秒から1マイクロ秒にわたる時間幅で,過渡吸収分光法による光励起キャリア濃度の時間変化を様々な励起光密度で測定した。

次に,このような光励起キャリア濃度の時間変化に対して数値解析を行ない,再結合速度定数や電子濃度などの物性データを決定し,キャリア寿命を約6ナノ秒と推定した。

ここで,表面に到達できる光励起キャリアの割合は粒子径に依存すると考えると,粒子径が大きい場合,光触媒内部で生成した光励起キャリアはキャリア寿命までに消失し,水と接触する光触媒表面に到達できない。また,光触媒表面に到達した光励起キャリアが全て水分解反応に寄与すると仮定すれば,内部量子効率の上限は光触媒表面に到達した光励起キャリアの割合となる。

そこで,光触媒内部で生成した光励起キャリアのうち,キャリア寿命までに表面に到達する割合を計算したところ,粒子径を現状の10μmから1μmへと小さくすることにより,内部量子効率は56.5%に向上することが明らかになった。これにより,内部量子効率と変換効率の関係から,実用化の目安となる変換効率10%を大きく超える可能性を見いだした。

また,ドーピングにより電子濃度を変化させ,キャリア寿命を延ばすことができる。この効果を考慮したシミュレーションを行ない,電子濃度を現状の約1/100に下げることによっても内部量子効率は50%以上に向上し,変換効率が10%を超えると推定した。

これまで,粉末光触媒に対する過渡吸収分光測定を用いた物性データの決定は,ピコ秒やマイクロ秒の時間領域で個別に行なわれてきた。今回,初めて両方の時間領域にわたる測定データに対して理論解析を行なうことにより,高精度な性能予測に成功した。

研究グループは,これらの知見を触媒開発に反映し,変換効率10%以上の実現を目指すとしている。

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