東大ら,太陽系近くに低日射の小型系外惑星を発見

東京大学,アストロバイオロジーセンターらは,系外惑星探索衛星TESSと地上望遠鏡の連携により,太陽系の近傍(138光年先)に新たな系外惑星「TOI-2285b」を発見した(ニュースリリース)。

今回発見したのは,太陽系の比較的近傍(138光年先)の恒星を公転する惑星「TOI-2285b」。この惑星は半径が地球の約1.7倍と比較的小さく,低温度(摂氏3200度)の恒星のまわりを周期約27日で公転している。

現在,ケプラー宇宙望遠鏡の後継機に当たるTESS宇宙望遠鏡が系外惑星の探索を行なっているが,TESSで発見した惑星候補天体が本物の惑星かどうかを検証するためには,複数の波長でトランジットを観測する必要がある。しかし,TOI-2285bのトランジットは27日に1回しか起こらず,地上から好条件(夜間かつ快晴)で観測できる機会は限られていた。

研究グループは,複数の波長で同時にトランジットを観測できるMuSCATシリーズを3台開発し,国内外の3台の望遠鏡に配置しており,世界に先駆けてTOI-2285bが惑星であることを確認した。さらに,惑星質量の精密測定が可能な赤外ドップラー観測装置IRDを用いることで,惑星の質量の上限値(地球質量の19倍)を得ることにも成功した。

TOI-2285bが惑星が主星から受ける日射量は,地球が太陽から受ける日射量の約1.5倍と見積もられる。この日射量は,もし惑星が地球と同じように薄い大気しかもたない岩石惑星であった場合,惑星表面の水がすぐに干上がってしまう程度に強力。

一方,もし惑星の中心核の外側にH2Oの層が存在していて,かつその外側を水素を主体とする大気が覆っていた場合,H2O層の一部が液体として安定的に存在する可能性がある。今回,研究グループのシミュレーションを行なったところ,惑星の表層に液体の水(海)が存在する可能性があることが分かった。

今後,実際にTOI-2285bの表層に液体の水が存在するかを調べるためには,まずは惑星の質量を正確に測定することが重要となる。TOI-2285bは赤外線で明るく見えるため,IRDのような観測装置で質量の測定が可能。今後,惑星の正確な質量を測定し,惑星の内部組成に迫ることが期待されるという。

また,次世代望遠鏡により,惑星の大気中に水などの分子の存在が明らかになることも期待でき,生命の痕跡となる分子を探る研究が可能になると期待されている。

TESSは少なくとも2022年まで探索を継続する予定のため,研究グループは今回と同様に地上望遠鏡との連携により,より有望な惑星の数を増やすことが期待できるとしている。

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