東京工業大学,東京エレクトロンデバイス,独Fraunhoferは,可視光画像と赤外線画像を,個別かつ同時に制御しながら超高速で投影できる,プロジェクションマッピング用の高速プロジェクタを開発した(ニュースリリース)。
動いている物体に対してプロジェクションマッピングを行なうダイナミックプロジェクションマッピングが注目を集めている。
ダイナミックプロジェクションマッピングは,①カメラなどで動いている投影対象の位置や形状を認識(センシング)し,②捉えた対象物にぴったりと重なり合う変形・陰影情報を持たせた映像をリアルタイムで生成し,③刻々と移り変わる対象物の位置に合わせて映像を投影するという手順で行なわれる。
一方,リアリティのある投影には,対象物を平面に限定したり,センシングを高速化するめに対象にマーカーを付けなければならないといった制約があった。そこで研究グループは,プロジェクタを映像提示だけでなく,センシング用途にも併用することに着目した。
プロジェクタとカメラを並べたプロジェクタ・カメラシステムは,プロジェクタで既知のパターンを空間中に投影しながら,その反射像をカメラで撮像することによって,さまざまな空間情報をマーカーを使わず効率的に取得できる。
しかし,ダイナミックプロジェクションマッピングにおいては,センシング用の投影と映像ディスプレー用の投影を同時にする際に,互いを阻害しない形で実現するのが難しかったため。
研究グループではセンシング用の投影に,人の目では知覚できない赤外線(IR)画像を用いることで課題の解決を目指し,RGB画像とIR画像を同時に,高速で投影できるプロジェクタを設計した。
このプロジェクタは,1,024×768のDLPデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を2基搭載し,24bitのRGB画像と8bitのIR画像を,同時に制御することができる。さらに,RGB画像とIR画像の照明光学系を分離し,DMDの反射後に像を統合することによって,コンパクトな構成と高輝度の投影を達成した。
また,プロジェクタに組み込まれる光源やDMDに最適化された光学系を独自に設計し,RGB画像とIR画像を,ほぼずれることなく投影できるようにした。超高速のDMDの制御と光源の変調を高精度に連携させ,最大925fpsまでの高フレームレート投影を実現。さらに独自の通信インタフェースにより,数ミリ秒でコンピュータからプロジェクタへの映像転送から投影までを完了する。
研究グループは,IR画像を使ったプロジェクタ・カメラシステムによるセンシングを行ないながら,その結果に基づいたRGB画像の制御が行なえるようになったとしている。