東大ら,ガラスを安定化する新たな方法を発見

東京大学と英オックスフォード大学は,数値シミュレーションを用いて,ガラス状態を安定化するための新たな方法を発見した(ニュースリリース)。

ガラス状態は,時間の経過とともにエイジングや脱硝により,より安定な状態にゆっくりと変化していくことが知られている。

これは,ガラス状態が結晶とは異なり本質的に非平衡状態にあることを反映している。この安定性の欠如は,多くの産業用途において深刻な問題を引き起こす。研究では,数値シミュレーションにより,粒子の局所的な体積分率の不均一性を抑制することで,モデル的なガラスであるコロイドガラスにおいて,エイジングや脱硝を抑制可能であることを示した。

コロイドガラスは,「雪崩現象」のような間欠的なダイナミクスを伴ってエイジング・脱硝することが知られている。研究グループは,粒子の大きさに小さな反復的な調整を加えることによって,その局所的な体積分率を空間的に均一にした。

その結果,たとえガラス中に結晶が存在していても,長期間にわたって,その結晶の成長を完全に防ぐことができることを明らかにした。また,局所的な体積分率の均一化は,各粒子の局所的な力学的な安定性を劇的に変化させ,各粒子の周りの直接的に力を支え合う最近接粒子の数を均一化することを明らかにした。

このことは,ガラスをより「機械的に均質化」することで安定化できることを示しており,超均一性として知られる構造的な均一性と,ガラスの力学的な均一性およびその結果としての安定化との間に,基本的な関連性があることを示唆しているとする。

これまでガラス状態の安定化には,アニール法や表面拡散を利用して構造の安定化を図る蒸着法などに代表される「熱力学的な安定化」が用いられてきたが,この研究により,「力学的な安定化」という新しい道が示されたという。

この発見は,ガラス状態の安定性に,熱力学的自己組織化だけでなく力学的な自己組織化が大きく関わっていることを示しており,非平衡なガラス状態を力学的に安定化させるための新たな物理的な原理を提供したと言えるもの。最近,コロイド系に周期的な変形を加えると密度を均一化することが可能であることが実験的に示されており,超安定ガラスを実験的に実現することも可能であると期待される。

研究グループはこの方法について,粒子間の斥力相互作用がガラス形成に支配的な系に広く応用可能であると考えており,経時的な劣化や脱硝に対して極めて安定性を有する超安定ガラスの形成を可能にするとしている。

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