兵県大ら,ペロブスカイト太陽電池の耐久化を実証

兵庫県立大学,紀州技研工業,スイスSolaronix S.A.,独Fraunhofer ISEは,炭素電極を備えたペロブスカイト太陽電池の性能が光照射によって回復するメカニズムを提唱し,ペロブスカイト太陽電池で世界最長となる屋外環境20年相当の寿命を実証した(ニュースリリース)。

ペロブスカイト太陽電池の耐久性を改善するため,研究グループは耐久性に優れた「炭素電極を備えたペロブスカイト太陽電池」を目指した。

この太陽電池は,①真空プロセスが不要で,炭素電極は金属電極に比べて安価,②完全塗布型工程で軽量基板の利用が容易,③主要な材料の炭素電極(グラファイト)とヨウ素の生産量は,日本が世界シェア20~30%を占め,高い競争力が期待される。

炭素電極を備えたペロブスカイト太陽電池は,予め多孔質構造の酸化チタン,酸化ジルコニウム,カーボン電極の3層を印刷で形成し,ペロブスカイトインクを下部まで染み込ませて,ポストアニール処理によりペロブスカイト層を結晶化して陽電池として機能させる。

この太陽電池に疑似太陽光(100mW/cm2)を照射すると,開放電圧と曲線因子が改善する現象が観測された。調査の結果,ペロブスカイト内のイオン移動が光改善に関与していると考え,イオンが関連する低周波数領域のキャパシタンスを調査したところ,キャパシタンスが光照射中に増大する様子を観測した。

研究グループが提唱したメカニズムは以下の通り。ペロブスカイト太陽電池は光発電中に大きな電界がかかり,ペロブスカイト結晶のAサイトカチオンであるメチルアンモニウムイオン(MA)は陰極側(酸化チタン側)に移動する。

イオン移動はペロブスカイト結晶の構造維持に支障を生じさせるデメリットを有する反面,MAによるイオン移動が酸化チタン/ペロブスカイト界面で活発に生じるほど,色素増感太陽電池での電子の導電原理と同様に,電子の導電性が向上するメリットも有する。すなわち,光照射の開始に伴いイオン移動が活性化して電荷の蓄積が起こり,電子の導電性が向上すると考えた。

研究グループは,ペロブスカイトに添加した5-アミノ吉草酸(5-AVA)が酸化チタン/ペロブスカイト界面の結晶構造に変化をもたらしたことが,イオンの活性化を利用した電子の導電性機構を実現できた理由と推測しており,今後更なる調査を進める。

さらに,加速劣化試験により屋外環境の20年に相当する耐久性を実証した。これは封止技術との組合せにより達成したが,光改善がなければ達成できなかったものだという。

研究グループは,高耐久性を維持しつつ,変換効率を向上させる技術開発が期待されるとしている。

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