東大,汎用性と拡張性を持つ光量子プロセッサ開発

東京大学の研究グループは,「究極の大規模光量子コンピューター」方式の心臓部となる独自の光量子プロセッサの開発に成功し,その光量子プロセッサが,情報を乗せた1個の光パルスに様々な計算を複数ステップ実行できることを示した(ニュースリリース)。

典型的な光量子コンピュータ方式は,多数の量子ビットで何ステップも計算をする大規模な計算を行なう場合,計算回路が大量に必要になり,光回路が大規模になる。このため,光量子コンピュータの大規模化は難しいと考えられていた。

一般に、光量子コンピューターの計算回路は「量子テレポーテーション」の原理に基づいており,①2つの光パルスの間の量子もつれの合成,②片方の光パルスの測定,③もう片方の光パルスへの操作,という一連の手順を踏むことで加減乗除のような単純な計算が1回実行される。

これまで研究グループは,光量子プロセッサの回路の一部を開発し,手順①の「量子もつれ光パルスの合成」までを検証していた。今回,光量子プロセッサの回路を完成させ,回路の多数の構成要素(ミラーの透過率や光スイッチのon/offなど)をナノ秒の精度で時間同期しながら切り替える仕組みを導入した。

これにより,回路内で①~③の全ての手順を時々刻々と行なって計算が実行できるようになった。さらに,回路の切り替えパターンの変更により,行なう計算の種類や繰り返し回数も変更できるようになった。

今回,開発した独自の光量子プロセッサが,従来の計算回路にはない汎用性と拡張性を兼ね備えた万能な動作ができることが実証された。まず,量子コンピューターに必要な計算5種類のうち4種類が,同じ回路構成のまま実行できることを実験的に確かめた。また,もう1種類の計算も特殊な補助光パルスを入力すれば実行できることを理論的に示した。

さらに,①~③の一連の手順を繰り返すことで,最大3ステップの計算まで実行できることも実証した。原理的には,今回の1個の光量子プロセッサを繰り返し用いれば,様々な計算を無制限に何ステップでも続けられる。

従来,光量子コンピューターの計算回路は,計算の種類の変更には回路の変更が必要となる汎用性の乏しいものであり,また複数ステップの計算には回路が複数個必要なため拡張性にも難があった。

この光量子プロセッサは,量子コンピューターのみならず,様々な光量子技術へ組み込むことのできる高い応用性も併せ持つという。研究グループは,万能で応用性の高い日本オリジナルの光量子プロセッサを世界に先駆けて開発できたとしている。

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