東大ら,スキルミオンひもの三次元形状を可視化

東京大学,関西学院大学,京都大学は,磁性体中の電子スピンが作る竜巻構造「スキルミオンひも」の三次元形状を可視化することに,世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

磁性体の中で現れる「磁気スキルミオン」と呼ばれる電子スピンの渦巻き構造が,新しい情報担体の候補として注目されている。

スキルミオンは,幾何学的な特徴(トポロジー)によって守られた安定なオブジェクトとして振る舞い,その直径は数百〜数nmと非常に小さく,また微弱な電流によって効率的に動かせることから,次世代の磁気記憶・演算素子のための超高密度・超低消費電力な情報担体としての応用が期待されている。

スキルミオンは,理想的な二次元系においては粒子としての性質を持つことがわかっており,実際に二次元的なイメージング手法を用いた観測例が報告されている。一方で,最近の理論研究によると,現実の三次元系におけるスキルミオンは,スピンが竜巻状に整列した「ひも」としての性質を持つことが予測されている。

しかし,従来の二次元的なイメージング手法では深さ方向の情報が失われてしまうため,こうしたスキルミオンひもの三次元的な形状を実験的に可視化することは困難であり,その観測手法の確立や性質の解明が,大きな課題となっていた。

研究では,CTスキャンで用いられるX線トモグラフィーに着目。このアプローチでは,さまざまな角度から撮影した二次元透過像を合成することにより,観察対象の三次元形状を精密に再構築できる。

今回は,ナノスケールのスピン構造を観察する必要があることから,①円偏光を利用したX線磁気円二色性(XMCD)を用いてスピンの向きを識別できるようにする,②150nm幅まで集光したX線ビームを走査することで高い空間分解能の透過像を得られるようにする,③X線ビームに対して試料と磁場が同時に回転できるようにする,といった特別な工夫を加えた測定環境を,大型放射光施設SPring-8に構築した。

実際に,室温で数百nmの直径のスキルミオンを生じることが報告されている合金材料を観測した結果,スキルミオンひもの三次元形状を可視化することに世界で初めて成功した。観察結果から,試料内をほぼ真っ直ぐに貫通した形状のスキルミオンひもの存在が実験的に証明され,さらに欠陥構造も明らかになった。

この結果は,これまで実験的に未解明だったスキルミオンひもの三次元形状を直接観察するための画期的な新手法を提示するものであり,研究グループは,スキルミオンの情報担体としての性質のさらなる理解に大きく貢献することが期待されるとしている。

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