理研,光とマイクロ波による化学合成反応系を開発

理化学研究所(理研)は,光とマイクロ波の協働的な触媒的化学合成反応系の開発に成功した(ニュースリリース)。

マイクロ波照射によって起こる化学反応や反応速度の向上のうち,加熱効果とは異なる原理によるものは「(非熱的)マイクロ波効果」と呼ばれ,マイクロ波化学という新分野で研究されている。

しかし,マイクロ波化学では主に固体表面上の反応を扱うため,有機単分子における効果についてはほとんど知られていない。研究グループは今回,有機単分子におけるマイクロ波効果の観測,機構解明,ならびに合成反応への応用を目指した。

研究では光触媒として,T1準位からS1準位へ電子が戻りにくく,比較的安価なフェニルアセチレンを選んだ。水銀不使用のキセノンランプを光源とし,原料のジメチルスルホキシドに対して1/20モル当量のフェニルアセチレンを触媒として,ジメチルスルホンへと酸化する実験を行なった。

1気圧の酸素雰囲気下で,光量を450nmにおいて30mW/cm2と一定にし,50℃で48時間反応させたところ,マイクロ波ありの場合は収率77%,マイクロ波なしの場合は収率21%と,効率に著しい差が見られた。

また,光なしの場合は収率0%,触媒なしの場合は収率4%となり,この反応系では光と触媒が必須であり,かつマイクロ波が反応効率の向上に大きく影響していることが分かった。いずれも副反応は観測されず,未反応原料はおおむね回収された。

なお,同様の条件下でマイクロ波の電場のみを分離して照射すると,3時間でジメチルスルホンが収率11%で得られたのに対し,マイクロ波非照射では収率4%であったことから,マイクロ波の電場の反応への寄与が示された。

次に,この現象がT1準位の寿命延長によるものであることを確認するために,フェニルアセチレンのベンゼン環のパラ位に塩素(Cl),臭素(Br),およびヨウ素(I)のハロゲン置換基を導入したものを触媒として用いた。T1準位の寿命は,塩素,臭素,ヨウ素置換基の順に,約1桁ずつ短くなっていく。

この条件で20時間の反応時間で実験したところ,塩素(収率32%),臭素(収率27%),ヨウ素(収率3%)の順に収率が低下し,この反応におけるT1準位の寿命の重要性を確認した。

また,トルエン溶媒中でフェニルアセチレンによる一重項酸素の発生(量子収率21%)の観測にも成功し,この反応の一重項酸素の関与も示された。この結果も,T1準位の寿命が重要性を支持する。

研究グループは,光・マイクロ協働効果が,光触媒反応のエネルギーを大幅に抑えたカーボンニュートラル合成法の開発につながるとしている。

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