三菱電機は,自動車などに使用される軽量・高強度の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)用レーザー加工機として,炭酸ガス三次元レーザー加工機「CVシリーズ」2機種(ML1515CV-12XM,ML3122CV-12XM)を10月18日に発売した(ニュースリリース)。
炭素繊維と樹脂から生成されるCFRPのレーザー切断において,板金の切断に広く使われているファイバーレーザーは,樹脂に対するビーム吸収率が極端に低く,炭素繊維からの熱伝導によって樹脂を溶かす必要があるため,CFRPの切断には不向きとなる。
また,炭酸ガスレーザーは,炭素繊維と樹脂の双方に対して,レーザーエネルギーの吸収率が高いものの,従来の板金切断用炭酸ガスレーザーではパルス波形が急峻ではなく,樹脂への入熱が大きいため,CFRPの加工に不向きだった。
この製品は,急峻なパルス波形と高出力を両立したCFRP切断用の炭酸ガスレーザー発振器。世界で初めて発振器(発振段)と増幅器(増幅段)を同一の筐体に統合し,低出力で発振したビームをCFRPの加工に適した急峻なパルス波形へと変換し,再度放電空間に投入し増幅することで高出力化する。CFRP加工に適したレーザー光をシンプルな構成で出射することが可能だという。
また,今回開発したCFRP切断用シングルパス加工ヘッドは,板金のレーザー切断のように1回のレーザー光走査で切断が可能なため,何回も同じ経路にレーザー光を走査させるマルチパス加工に比べ,生産性の高い加工が可能。
この加工ヘッドに搭載したサイドガスノズルは,切断時に発生する高温の材料蒸気や粉塵を端材側へ除去し,材料への熱影響を抑えることで従来のレーザー加工では達成できなかった高品位な加工を実現している。
レーザー加工は非接触加工のため工具などの消耗部品も少なく,廃液などの廃棄物も発生しないため,ランニングコスト低減へ貢献する。さらに,従来加工経路の修正はCAMで編集する必要があったが,制御装置に経路編集用CAMを内蔵することで,現場での経路修正が可能となり,オペレーターの作業効率が向上するとしている。
IoTを活用した同社のリモートサービス「iQ Care Remote4U」では,レーザー加工機の稼働情報をリアルタイムで確認可能で,また,加工実績や段取り時間の内訳,電力・ガス消費量等をIoTプラットフォームで収集することで,生産プロセスの改善・ランニングコスト低減に貢献するという。