岡山大学の研究グループは,無料または安価なアプリケーションを組み合わせて,一般的なPCであるMacで機械学習を行ない,分裂細胞を含む画像の分類ができる方法を開発した(ニュースリリース)。
近年,生物学分野においても自動撮影機能つき顕微鏡が身近になり,自動で大量の画像が取得可能になってきている。
研究グループは今回,これまで高価であったり,人手で長時間かかっていた画像分類を安価なアプリを組み合わせることにより,誰でもMacを使って機械学習したAIでオーダーメードの画像分類機が作れるようにした。
この方法では,「モデル」と呼ばれるAIが画像分類を行なう際に参考にする手引きを学習により作成するために,アップル社がアプリケーション開発者向けに無料で公開している 「Create ML」というアプリケーションを用いた。
出来たモデルと「RectLabel」という安価な($19.99)アプリケーションを用いることにより,モデルに基づいて,入力した画像にラベルをつけることができる。ラベルづけされた画像を研究グループが開発した「CutSort」というアプリに入力するとラベルに従って画像を自動的にフォルダに仕分けることができるという。
これらのアプリケーションは,コマンドをタイピングして操作しなければならない他の機械学習用のシステムとは異なり,一般的なユーザーが使っているアプリケーションと同様な方法で操作できる。
この3つのアプリケーションとMacを用いれば,プログラミングの知識のない人でも,安価に,容易に自身の用意したデータで機械学習したオーダーメードの画像分類機をつくることができる。また,これらのアプリケーションにより,画像中の物体を検出し,分類することもできるという。
研究においては,「この細胞の数が数えたい」「これが写っている画像だけ集めたい」といったニーズは多いが,目的の物がこれまでの解析アプリケーションを使って単純にサイズや色で分けることができず,かといって専門家と共同研究するのは憚られるという声があった。
このシステムは,導入コストも低く,専門家の手を煩わすことなく利用できるので,この様な「ちょっとした分類ニーズ」に最適だとする。また,いったんモデルができてしまえば,それを使って誰でも同じ判定結果を得ることができるので,「学生が代替わりするたびに判定結果がぶれてデータの比較が難しい」といった日本の研究室にありがちな問題も解決してくれるとしている。