東芝,東芝デジタルソリューションズ,英BTは,世界初の量子暗号通信の商用向けメトロネットワークを共同で構築し,実証試験を開始すると発表した(ニュースリリース)。
このネットワークはBTによって運用される。BTは,BTの子会社であるOpenreachのOptical Spectrum Access Filter Connectのプライベートファイバーネットワーク向けソリューションで各拠点をつなぎ,専用の高帯域エンドツーエンド暗号化リンクを含む,量子鍵配送(QKD)と耐量子暗号の技術を用いたさまざまな量子暗号通信サービスを提供する。
今回の実証システムは,コアコンポーネントとアクセス系コンポーネントの両方を含む量子ネットワーク上で提供され,BTの既存のネットワーク運用管理システムに統合される。東芝デジタルソリューションズは,量子鍵配送システムハードウェアと鍵管理システムソフトウェアを提供する。
長期的に高いセキュリティを必要とするデータが,将来盗聴することを目的として,鍵交換と暗号化されたデータを今は保存のみし「量子コンピューターが利用可能になったときに解読する」といった「刈取り攻撃」のリスクにさらされる可能性がある。
QKDに基づくセキュリティは,計算上または数学上の進歩に対しても安全な鍵交換を用いることで,量子コンピューターによる現在または将来の攻撃の影響を受けないものと考えられている。
BTと東芝,東芝デジタルソリューションズは既に2つの商用サイト間でのポイントツーポイントの量子暗号通信リンクを構築しているが,複数のエンドポイントを備えた完全な量子暗号通信メトロネットワーク環境を展開するには,統合と管理のための新しいアプローチが必要だった。
今回の新しいネットワークは,英国ブリストルを拠点とする企業向けにBTと東芝グループが構築したポイントツーポイントソリューションを拡張したもので,大都市圏の複数の顧客にサービスを提供することが可能となる。
東芝グループは2020年10月,ケンブリッジを製造拠点とするQKD製品を発表した。これは,市販のファイバーQKDシステムの中で最も高い鍵配送レート(300kb/s)と最長の鍵配送距離を実現しているという。
これは多重化機能により,データと量子鍵を同じファイバーで送信できるため,コストがかかる量子鍵配送専用のインフラの構築が不要。また,ネットワーク全体でエンドツーエンドの保護を可能にするネットワーク鍵配信および管理ソフトウェアも提供している。