凸版印刷は,ガラス製マイクロ流路チップのフォトリソグラフィ工法による製造技術を開発した(ニュースリリース)。
近年,血液などの体液サンプルを用いて,がんの超早期発見を可能とするリキッドバイオプシー検査が注目を集めている。
検査には,生体適合性に優れ,光学分析に適したPDMS(ポリジメチルシロキサン:シリコーンの一種)を材料として,射出成形法で製造したマイクロ流路チップが一般的に使用されているが,PDMSは微細加工領域での生産性が低く,原材料である液体シリコーンの価格が高いため,チップが高額になってしまうことが普及の弊害になっていた。
同社はこの課題に対して,液晶ディスプレー用カラーフィルタの製造のフォトリソグラフィ法による微細加工技術を応用し,マイクロ流路チップを製造する技術を開発した。
具体的には,ガラス基板に塗布したフォトレジスト(感光性樹脂)上に幅10μm~数mm,深さ1~50μmの流路(液体や気体を流すための溝や穴)を形成し,硬化処理されたフォトレジストの上に,分注(検体や試料となる液体を注入)する穴の開いたカバーを装着する。
特長として,血液や細菌,細胞などを分析する用途向けのマイクロ流路デバイスでは,深さ50μm程度の「深い溝」を必要とするケースがある。同社は,フォトレジストの組成や露光プロセスを見直すことで,幅広い分析用途向けに最適な流路のデザインの提供を可能とした。
また,スマートフォンやタブレット,PCなどのデジタル機器向け液晶カラーフィルタ向けの製造装置を使用することで,大型のガラス基板上にマイクロ流路チップを「多面付け」して生産することが可能。
この工法によるマイクロ流路チップは,PDMS製のチップと比較して同等あるいはそれ以上の特性を持ち,さらに大量生産と低コスト化が可能になる。同社は,今回試作に成功したガラス製マイクロ流路チップの実用化に向けた実証実験をパートナー各社と行ない,フォトリソグラフィ法による量産化技術を2022年3月を目途に確立,製品化に取り組むとしている。