日本電信電話(NTT)は,R&Dにおける「知の泉」の源を一層強化すべく,現代数学の基礎理論を研究する組織「基礎数学研究センタ」Institute for Fundamental Mathematicsを10月1日より新設する(ニュースリリース)。
同センタでは,現代数学の多様かつ広範にわたる未知なる課題に取り組み,必要な言葉・概念の整備のもとに数学の真理の探究を推進する。さらに新たな数学問題の発掘を行ない,数学的自然の沃野の開拓を通じて,以下のような課題の解決への寄与をめざす。
リーマン予想や,ラングランズ予想など,現代数学において重要な未解決問題への挑戦を通じて新たな基礎理論体系の構築を進めることにより,未だ明らかになっていない量子コンピューティングの速さの根源の解明や,量子計算機でも破ることのできないことが保証される新たな暗号方式の考案など,デジタルを超える量子技術の革新に向けた研究を加速する。
また,生命科学・脳科学・社会科学等におけるさまざまな現象の相互作用や未解明な振る舞いに関しても,トポロジーと幾何学,数論,群論・表現論,関数解析,微分方程式・力学系,確率論,圏論,グラフ理論,ゲーム理論などの現代数学をさらに発展させるなか,それぞれの研究領域の研究者との連携の機会が見込まれるとする。
各研究領域における現代数学の手法を駆使したアプローチによる数理的な記述方法の探索を通じて,未知の疾病の解明および新薬の発見や,超大規模なシミュレーションと進化するAIの融合による災害予測,災害救助を本格的に担えるアバターやロボットの構築などへとつながる貢献を期待する。
さらには,究極の多体系である人間の脳のダイナミクスや人の行動メカニズム,「記憶」「思考」「意識」が生まれるメカニズムの解明や,新たな脳型計算機実現に向けた理論の発展への寄与も期待されるという。
NTTでは今後,社外から基礎数学に関する第一級の研究者を招き入れることにより広く学術貢献すると同時に若手研究者を育成し,IOWN構想実現に向けて立ちはだかる諸問題に対し,各分野の研究組織と共に最新の現代数学手法を駆使しながらアプローチし解決していくとしている。