日本の海底資源開発の環境評価法,国際標準に

海洋研究開発機構(JAMSTEC)と国立環境研究所(NIES)が,内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において開発した海底資源開発に対応する調査手法が,世界で初めて国際標準化機構(ISO)の国際標準規格として発行された(ニュースリリース)。

公海での海底資源について管轄する国際海底機構(ISA)では,海底鉱物資源開発に際しての環境調査のガイドラインを提案し,鉱区の契約国には定期的な環境調査の実施を求めている。

ハワイ沖のISA国際鉱区や熱水活動域などでは,研究調査が実施されて幾多の報告が論文として公表されている。一方,商業ベースの海洋資源開発が始まる際には,民間でも使える深海調査とモニタリングの技術が必要になる。

ISOは,日本の要請により海洋技術を扱う委員会の中に海洋の環境影響評価に関わる作業部会を設置。規格案は,国際機関の海洋調査技術のアーカイブに登録していた開発手法から,技術規格となり得る手法を選定して原案を作成した。

2018年に日本の提案は新規の作業原案として参加国の支持を得て承認され,作業部会での検討と修正を経て,2021年の加盟機関による投票により,環境調査とモニタリングの手法の4つの技術規格(ISO 23731,23732,23734,23730)の発行が承認された。各規格の概要は以下の通り。

①ISO 23730
海洋環境影響評価に求められる基礎項目を実施するための方法と手順に関する規格。この規格では,関連する規格および日本が提案した以下の規格を構成要素として取り込んでいる。

②ISO 23731
海底観測機器によるカメラでの長期現場観測における手順と設定に関する規格。潜水探査機と海底設置型観測機器のいずれにも対応し,国産の「江戸っ子1号」シリーズによるビデオ観測の手法でも対応できる。観察手法を規格化することで違う場所での観察結果との比較研究を容易にした。

③ISO23732
海底堆積物中に生息する小型底生生物の個体数,形態,群集構成を効率よく調べる手順に関する規格。従来の調査手法では,顕微鏡観察で人の手により個体を仕分けていた。この規格では,堆積物試料の前処理とイメージング・フローサイトメーター(粒子画像分析装置)とメタゲノム解析により,迅速で効率のよい調査手順を確立した。

④ISO 23734
海底資源の開発現場における水質監視を行なうための洋上バイオアッセイ法に関する規格。この規格では,水質の監視に適した海産藻類試験株を規定するとともに,試験株と遅延蛍光強度を組み合わせることにより,従来のバイオアッセイ法(生物を用いた影響評価法)と比べて試験設備の省スペース化ならびに試験時間の短縮化を実現した。

遅延蛍光の測定には微弱発光計数装置を用いて行なう。洋上船舶において迅速に実施可能であり,海洋生物への有害影響の可能性をオンサイトで迅速に把握できることが期待されるという。

その他関連ニュース

  • 北大ら,積雪中の光吸収性粒子の影響と由来を解明 2021年10月27日
  • 環境研ら,NO2同時観測で燃焼由来CO2を高精度推定 2021年07月21日
  • 千葉大,大気汚染を長期リモートセンシング 2021年05月14日
  • 森林総研ら,落葉の光分解の炭素循環での役割解明 2020年11月19日
  • 産総研,標準化推進センターを始動 2020年07月01日
  • 東工大ら,植物電位を測定するナノシート電極開発 2020年06月05日
  • 報知光など産総研のアクセシブルデザイン,ISOに 2020年04月03日
  • JAEAら,排水路用放β線モニター開発 2020年01月31日