日本電信電話(NTT)は,同社が開発した「100km長VAD単一モード光ファイバ」が,国立科学博物館の「重要科学技術史資料(未来技術遺産)」に登録されたと発表した(ニュースリリース)。
VAD法による長尺低損失単一モード光ファイバの工業的製造が可能であることを初めて実証した光ファイバとして,全合成単一モード光ファイバ,VAD法の発展と普及,光通信時代実現の先駆けとなる技術として重要であると評価された。
現在,光ファイバ通信に多く用いられている光ファイバは,光が通る中心部分のコア・外側のクラッドの2層構造となっている。VAD法とは,石英ガラスを原料として光ファイバのもととなる「母材」を製造する方法の1つ。
ガラスの原料ガスから生成されるガラス微粒子(コア用・クラッド用)それぞれをバーナーで吹き付けて,2層構造を持つ円柱状の多孔質母材を作製,その多孔質母材に高温の加熱処理を施し透明化する。この母材を高熱で細く引き伸ばしたものが光ファイバとなる。
1960年代後半から通信用の伝送媒体としての実現可能性が提示されていたガラス製光ファイバについて世界で研究開発が始まるなか,1970年代初頭,NTTは光ファイバ製造技術の研究を開始した。
米国で考案されていたMCVD法・OVD法などに接し,NTTは古河電工,住友電工,フジクラとの共同研究体制を立ち上げ,MCVD法の改良を行なう一方,量産に適した日本独自の光ファイバ製造方法の考案をめざし研究開発を行なった。
その結果,1977年には国際会議「IOOC’77」で量産性に優れた日本独自の光ファイバ製造方法としてVAD法を発表し,高く評価された。1977年以降もさらなる研究開発を推し進め,VAD法を用いた光ファイバ量産工程の確立,VAD法による超低損失光ファイバの製造方法確立などを実現していきた。
VAD法が持つ,光ファイバ母材の大型化・低損失化がしやすいなどの特長に加え,継続的な研究開発により,極めて伝送損失の少ない光ファイバを無接続かつ継ぎ目なしで100km長以上の長尺で作製することが可能になった。これにより,光ファイバの量産化・経済化に大きく貢献し,現在も世界的に使われているという。