東大ら,ガラスのミクロな構造起源を解明

日本学術振興会と東京大学は,コンピュータシミュレーションと理論解析を用いて,Herschel-Bulkley則に従う最もシンプルな物質である単純ガラスにおいて,同法則のミクロな構造起源の解明に成功した(ニュースリリース)。

セメントやマヨネーズ,歯磨き粉など,身の回りの多くの物質は静置状態では流動せず固体的に振る舞うが,一定以上の力を加えると流体のように流れる。こうした性質を利用することで,例えば歯磨き粉の場合には適量を歯ブラシの上に乗せることができる。

降伏流体と呼ばれるこれらの物質は,普遍的にHerschel-Bulkley則と呼ばれるレオロジー法則に従うことが経験的に知られていた。統計力学的観点では,分子などの構成要素が持つミクロな構造や運動がマクロな物性を決定すると期待されるが,Herschel-Bulkley則のミクロな起源は,同法則の発見から90年以上たった今も未解明のままだった。

研究では,まず基準振動解析という手法を拡張し,外力により流動化したガラスに適用することで,流動化の起源となるミクロな構造が虚数振動数を持つ固有振動モードとして抽出できることを発見した。

さらに降伏臨界性に立脚した理論的解析により,それらの特徴的構造から定量的にHerschel-Bulkley則が説明できることを示した。このことは,この開発手法で抽出された構造こそが同法則のミクロな起源とみなせることを意味するという。

降伏臨界性は,ガラスの本質的かつ普遍的な性質の候補として近年注目を集めている限界安定性と呼ばれる性質と密接に関係していることも近年明らかにされている。この究成果は,こうした限界安定性,つまりガラスの本質的な性質についてのレオロジーや流動化現象の観点での理解の進展につながると期待される。

また,この研究で開発した手法をより複雑な物質に適用できるように拡張することができれば,将来的に様々な物質のレオロジー特性の設計指針が獲得できるようになると期待されるとしている。

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