熊本大,蛍光で細胞周期阻害物質を探索

熊本大学は,HeLa/Fucci2細胞を用いて蛍光イメージングによる細胞周期阻害活性のハイスループット評価系を構築することに成功した(ニュースリリース)。

Fucciは,細胞周期の特定の時期に核内に蓄積する2種類のタンパク質に赤色と緑色の蛍光タンパク質を融合して発現させることで,細胞周期を蛍光観察により可視化することができるインジケーター。

第二世代であるFucci2が導入されたHeLa/Fucci2細胞は,G1期に赤色蛍光を,そしてS/G2/M期には緑色蛍光を示すので,細胞を固定させる必要がなく,生細胞の状態で蛍光イメージングにより個々の細胞の細胞周期を解析することができる。

そこで研究グループは,HeLa/Fucci2細胞を用いて蛍光イメージングによる細胞周期阻害物質のハイスループット評価系を構築し,細胞周期阻害作用を示す天然物を探索した。

96穴プレートに天然物エキスを添加したHeLa/Fucci2細胞を2日間培養した後,イメージングプレートリーダーを用いて蛍光画像を取得し,赤色蛍光ならびに緑色蛍光を示す細胞数を計測した。そして,赤色蛍光を示す細胞数に対する緑色蛍光を示す細胞数の割合をG/R値として,細胞周期を定量的に解析した。

コントロール(無処理)細胞におけるG/R値0.64に対し,0.4以下の場合をG1期での停止,1.2以上の場合をS期からM期における停止と設定し,海洋無脊椎動物や微生物のエキス5687サンプルの活性を評価した。

この評価系により,天然物エキスライブラリーをスクリーニングした結果,海綿Datylospongia metachromiaのエキスが細胞周期をS期からM期にかけて停止させた。そこで,エキスから細胞周期阻害作用を示す化合物を精製し,新規ベンゾキノンneoisosmenospongineとその類縁体を単離することに成功した。化合物の構造は,核磁気共鳴スペクトルなどのスペクトル解析により決定した。

天然物エキスライブラリーをスクリーニングし,細胞周期を阻害する天然物の網羅探索を行なった結果,細胞周期をS期からM期にかけて停止させる新規ベンゾキノン類を見出すことに成功した。

研究グループは,今後もこの評価系を用いて細胞周期阻害物質を探索することにより,新たな細胞周期阻害物質が得られると考えている。また,これまでに知られていない標的に作用するような化合物も見出すことができるのではないかとしている。

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