宇都宮大学の研究グループは,磁気共鳴画像(MR画像)の上に重畳する雑音量に応じて雑音除去するブラインド除去に成功した(ニュースリリース)。
磁気共鳴映像法(MRI)は医用画像診断装置として日々その重要性を増している。技術の進歩により高分解能かつ高品質な画像が得られるようになっているが,さらなる高速化法の提案により依然として雑音が多い画像が再生されることがある。
医用画像診断の精度をあげるためには生体の構造を失うことなく雑音を取り除くことが必要だが,生体の構造を保存することと雑音の除去性能をあげることを両立することは難しい。これに対して近年,深層学習を利用した雑音除去が提案され,高い雑音除去性能を示すことが報告されていた。
研究所グループは,雑音除去性能を改善するために,活性化関数に従来のReLUではなく,これまで利用されていないSwishを使用した。17層をもつ深層学習ネットワークを使用し,さまざまな雑音量をもつ画像をランダムに学習させる方法により雑音量が未知な場合であっても雑音量に応じて適切に雑音除去を行うブラインド雑音除去の性能を与えた。
提案法の有効性を高めるために複数の雑音画像に重みを変えつつ線形加算した複数の画像を作成し,それらに雑音除去を行う並列型雑音処理法(ParBID)を提案した。
重み付き加算により雑音の分布が異なるので,元は同じ画像群であっても異なる雑音除去を受けることになる。雑音除去後に重み付き加算の逆演算を行なうので加算により生じた画像の”ぼけ”の影響を受けない雑音除去像を得ることができるという。
この結果,雑音除去性能を改善することができた。また,ネットワークは画像内で雑音量が変化する場合であってもブラインド雑音除去の効果により良好に雑音除去できることが示されたとする。
ブラインド雑音除去を並列型雑音処理法に適用した方法では,単一の画像をブラインド雑音除去するよりも,生体構造の保存性を改善できることが示された。特に3枚の画像を使用する3-slice ParBIDのときに最も大きな改善が見られた。
深層学習を利用する雑音除去法は,優れた性能から医用画像処理の分野で多く使用されると予想される。この研究のブラインド雑音除去法は雑音除去処理を簡便なものとし,かつ並列型雑音除去は計算コストを大きく増やさずに雑音除去性能を高めることができるという。
この技術はMRI画像以外の医用画像や自然画像にも応用可能であることから,研究所グループは,今後多くの画像に対し適用実験を行ないたいとしている。