関医,肝・胆道がんの診断・治療に新手法を開発

関西医科大学の研究グループは,ICG(インドシアニングリーン)蛍光イメージングの肝・胆道腫瘍治療への応用について,5-ALA(アミノレブリン酸)による蛍光イメージングを同時に併用することで手術前のCT/MRI検査でも発見できなかった,微小な肝細胞がんを手術中に検出できることを世界で初めて突き止めた(ニュースリリース)。

肝臓がんの外科治療では,切ってはならない部分を決して傷つけないこと=安全性の確保と,切り取るべき組織をすべて切除すること=治療効果の最大化,という2つの要素が同時に求められる。しかも,がん細胞は肉眼で必ず確認できるとは限らず,これまでの手術では微小性がんが見落とされてきた可能性は否定できない。

そのため,正常な組織とそうでない組織を正確に見分ける,肝区域同定法が開発されてきた。その一つが生体内蛍光イメージングと呼ばれる,蛍光物質を用いて手術中にリアルタイムで目的の組織を光らせる手法。中でもICGを用いた肝細胞がんのイメージングによる手術中に肉眼でがん細胞を見せる方法が近年浸透してきた。

しかし,この手法はがん細胞をがん細胞であると同定する精度が高いが,特異度が約50%程度であり,完全に信頼がおけるものではない。一方,別の蛍光イメージング法の5-ALAは逆に,特異度が極めて高いものの同定感度・正診率が約60%弱と,ICG蛍光イメージングとは全く逆の特徴を持つなど,どの手法も一長一短があった。

そこで研究グループは,ICGと5-ALAによる蛍光イメージングを併用した結果,同定感度・特異度・正診率のすべてを高い水準で維持することに成功し,新たに同定した5つの潜在性微小腫瘍すべてで悪性所見を認めた。従来のICG単独による蛍光イメージングよりも,さらに高い特異度を導き出せることを示したのは世界で初めてだという。

また,ICG-Lactosome(インドシアニングリーン ラクトソーム)は,マウス肝がんおよび胆嚢がん診断と光線力学的治療に有効であることも発見。将来の難治性肝・胆道がんに対する新たな治療法となる可能性に期待が寄せられるとした。

今回の発見は,病変(がん組織)がどこまで広がっているかをリアルタイムで観察する術中イメージング技術の発展・向上に大きく寄与するもの。また,光線照射によって 著明な抗腫瘍効果を認めたことから,研究所グループは,今後の新たな診断手法と共に治療法の開発にもつながる可能性が期待されるとしている。

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