東大ら,金星の夜間の大気循環を赤外線観測で解明

東京大学,立教大学,宇宙航空研究開発機構(JAXA)らは,JAXAの金星探査機あかつきで取得した赤外線画像の解析により,金星をおおう雲の運動を昼夜の区別なく可視化することに成功した(ニュースリリース)。

金星大気の運動はこれまで,昼間に太陽紫外線によって照らされた雲の連続画像から主に推定されてきた。紫外線では雲に混入した化学物質の濃淡の模様が見えるため,これを追跡することができる。

それによれば,超回転(高度65km付近を中心に吹く100m/sに達する全球的な西向きの風)に加えて,赤道から両極へと向かう10m/s前後の流れがある。この流れは地球にも存在するハドレー循環という,赤道域で太陽光により加熱された大気が上昇して高緯度に向けて流れるような平均循環と解釈されたが,近年は熱潮汐波という,太陽光による大気加熱が引き起こす流体波動の一部分だという指摘もある。

ハドレー循環は昼夜全ての南北風を平均した流れであり,熱潮汐波は昼夜の風の違いをもたらす。この2つの大気現象を解明することは金星大気の理解にとって不可欠だが,そのためには昼夜の区別なく観測して全体構造をとらえる必要があった。

夜間の雲の動きを見るには,雲が発する赤外線を撮影して場所による雲頂温度の違いを追跡するのが良いが,これまで継続的に赤外線で金星全体が撮影されたことはなく,また赤外線でははっきりしたパターンが見えなかった。

今回研究グループは,日本の金星探査機あかつきに搭載された赤外線カメラ(サーモグラフィ)であるLIRが2年間にわたって約1時間ごとに取得した雲画像データを用いた。大気の超回転による雲の移動を考慮して複数の画像を互いにずらしながら重ね合わせて平均し,ノイズを低減したことにより、雲頂の0.3℃程度の細かな温度変動を識別し,大気の運動を可視化することに成功した。

分析の結果,昼夜を通して平均すると南北の循環はほぼ無いことがわかった。夜間の赤道向きの流れは,主に日没から真夜中にかけて生じていた。また,熱潮汐波の速度構造が初めて判明し,超回転の維持に働いているらしいこともわかった。

ハドレー循環の極向きの流れは雲頂より上にあり,赤道向きに戻ってくる流れは雲頂より下の雲層内にあることがうかがわれた。このような循環パターンは,大気全体のエネルギーの循環や超回転を維持する流体力学に大きく影響するという。

ハドレー循環や熱潮汐波の構造がわかったことで,数値シミュレーションによる金星大気物理の研究は今後,これらの結果の再現を目指すことになる。研究グループは,今回の成果は金星気象学に新たな手法をもたらすものだとしている。

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