芝浦工業大学の研究グループは,体温と外気温のわずかな温度差で安定して発電できる装置とその製造方法を開発した(ニュースリリース)。
ウェアラブル熱電発電機(w-TEG)は,体温を連続的に電気に変換して電子機器を駆動することができる。しかし<熱電材料の発電効率が悪いこと,着用時の温度差が小さいこと,重いこと,柔軟性が必要であることなどが,w-TEGの応用を妨げている。
また,従来の数値解析に基づく構造設計では,強制冷却を用いたため,横方向の熱伝達が無視されていた。研究では,有限要素シミュレーションを用いて,実用化のための糸口となる要素を見つけ出し,最適なw-TEGを設計した。
超低熱伝導率(0.03W/mK)のメラミンスポンジを封止材として用いることで,冷却用ヒートシンクを使わず,優れた曲げ耐久性,軽量性,通気性,低コスト性を実現した新しいπ型w-TEGを作製した。
実証実験では,わずかな温度差(5K)で静止時7μW/cm2,歩行時(風速1m/s)29μW/cm2を発電することを確認し,従来品に用いられるPDMSより柔軟性もがあり,曲げ張力が1/5程度だった。
今回,面積3.61cm2,厚み5㎜,量さ1.75g,曲げ張力0.75g,コスト6.5USドルほどでスマートウォッチを駆動できる熱発電機の製造に成功したとする。
研究グループは今後,半導体や熱電デバイス関連企業と共同し,微小な電源装置として,具体的な充電機器への適用を目指して設計・開発を進めていくとしている。