情報通信研究機構(NICT),住友大阪セメント,早稲田大学は,2つの要素技術を組み合わせた新たなミリ波受信技術を開発し,周波数101GHz・70Gb/sを超える高速ミリ波無線信号を光ファイバに直接伝送することに成功した(ニュースリリース)。
第5世代移動通信システム(5G)のサービスが開始され,ミリ波無線による10Gb/s以上の高速通信が実現される見込みとなっている。一方,ミリ波の広帯域性から通信速度は向上するが,高速な電子デバイスの実装が必要であり,無線送受信機そのものの消費電力が大きくなる。
加えて,ミリ波帯信号は従来の第4世代移動通信システム等で利用されるマイクロ波帯のそれに比べて大気中の到達距離が短いため,多数の無線アンテナ局を設置する必要があり,無線アンテナ局の低消費電力化と低コスト化が望まれている。
これまでNICTは,ファイバ無線技術と受光デバイスを研究開発して,光信号から無線信号へ変換する無線アンテナ局送信部の簡素化を実証したが,無線信号から光信号へ変換する受信部の簡素化が課題だった。
今回,研究グループは,ミリ波無線受信機の要素技術を二点開発し,高速ミリ波無線信号を受信し,光ファイバへの直接伝送に成功した。要素技術の一つ目は,共同開発した無線信号を光信号へ変換する光・無線変換デバイスで,強誘電体電気光学結晶(ニオブ酸リチウム)を利用した高速光変調器。結晶の厚さを従来比1/5以下の100μm以下とすることで,101GHzミリ波にも対応可能な高速性を実現した。
二つ目は、光・無線変換デバイスから発出される光信号を光ファイバに直接伝送するためのファイバ無線技術。局発信号を遠隔の光局発信号発生器で発生させ光ファイバ伝送を行ない,光・無線変換デバイスで生成される信号周波数を変換する技術を開発した。この技術により,ミリ波無線信号を光領域で周波数変換できるようになった。
これらの開発した技術を組み合わせて,無線信号を光信号へ直接変換する構成を実現することができ,64QAM変調時に70Gb/sを超える高速ミリ波無線信号を光ファイバ信号へ直接変換する伝送システムを構築し,実証実験に成功した。
これにより,ミリ波受信機内の消費電力が大きい電子デバイスが不要になり,構成の簡素化が期待でき,無線アンテナ局の低消費電力化と低コスト化等が期待される。
研究グループは,Beyond 5G時代の無線システムに向けたさらなる高周波化,高速化及び低消費電力化を目指した技術検討を進める。また,無線通信システムに関する国際標準化活動ならびに社会展開活動も推進するとしている。