日亜化学工業は,高圧ナトリウムランプの代替となる照明器具を実現できるLED「NVSW219F/1800K/R70」を発売すると発表した(ニュースリリース)。
この10年ほどで照明分野では,蛍光灯を中心に光源のLED化が進展し,水銀ランプも水俣条約による規制のために,今年からその大部分の製造,輸出入が禁止され,脱水銀化が進む。
しかしながら,水銀を含んでいても水俣条約の適用除外とされている光源もある。かつてトンネル灯に多く使われていたオレンジ色を灯す高圧ナトリウムランプはその代表とあなる。近年,道路灯では高圧ナトリウムランプのLED化が進んでいるが,高圧ナトリウムランプの本来持つオレンジ色が重視される次のような用途では積極的なLED化が行なわれていない。
・白っぽいあかりによって虫が寄り集まることを避けたい農道やコンテナヤード
・昔ながらの景観を大事にしている町並み保存地区など
高圧ナトリウムランプは,現在残っている水銀を含む照明器具の中で最も数が多く,LED化が待ち望まれていたという。今回,高圧ナトリウムランプと同じ発光色(1800K)のLEDを同社のラインアップに加えることで,こうした障壁が取り除かれLED化が加速することが予想されるとする。
また,このLEDは,高圧ナトリウムランプと同じ発光色でありながら,同時に,同社独自の蛍光体技術を用いて演色性の大幅な改善を実現した。高圧ナトリウムランプは演色性が低く色の区別が付きにくいのが欠点だったが,新しいLEDで代替することで,街路灯の下を通る人の服や車の色がはっきり区別できるようになるという。これは生活に快適さをもたらすと同時に,保安,防犯上の効果も期待される。
さらに,高圧ナトリウムランプがLEDに置き換わることにより,スマート照明と組み合わせることも可能となる。高圧ナトリウムランプの場合,点灯に10分から最大30分程度(再点灯時)の時間を要するが,LEDの場合,即時点灯・消灯や調光が可能となる。これにより,センサー機能と連動させて調光することで,車や人が近づいたときのみ照明を必要な照度まで明るくし,それ以外は最低限の明るさを保持あるいは消灯することが可能となり,更なる省エネやCO2の削減,光害の低減が期待されるという。
また,1800Kの生み出すオレンジ色の光は,夜空を暗く保ち星空を守るとともに,まぶしすぎる街路灯のそばに住む近隣住民が直面している安眠妨害の問題の解決,ウミガメなど動植物の保護にもつながるとしている。同社ではこの製品を,2021年9月から量産出荷するとしている。