情報通信研究機構(NICT)は,研究開発用の標準外径(0.125mm)4コア光ファイバを用い,波長多重技術と2種類の光増幅方式を駆使した伝送システムを構築し,319Tb/s,3,001km伝送実験に成功した(ニュースリリース)。
増大し続ける通信量に対応するための新型光ファイバ研究が進み,近年は研究開発用の標準外径の新型光ファイバが市販されている。今後は,光ファイバの特長を生かした伝送システムの研究開発が重要になると考えられている。
しかし,これまでの波長多重技術はC帯(波長1,530〜1,565nm)とL帯(1,565〜1625nm)を使用するのが一般的であり,帯域を広げS帯(1,460〜1,530nm)も使用した場合は,大容量は実現しても光増幅技術が伴わず,数10km程度しか伝送できていなかった。
研究グループは,研究開発用に市販されている標準外径の4コア光ファイバを用い,波長多重技術と光増幅方式を駆使した伝送システムを構築し,319Tb/s,3,001km伝送実験に成功した。この結果は,伝送能力の一般的な指標である伝送容量と距離の積に換算すると,957Pb/s×kmとなり,これまでの標準外径光ファイバ世界記録(NICTによる)の約2.7倍になる。
今回,C帯,L帯に加え,利用が難しいS帯も用いて広帯域化し,552波長多重と16QAM変調方式により,319Tb/sの大容量を実現した。さらに,希土類添加ファイバを使った増幅器とラマン増幅を組み合わせた周回ループ実験系を構築し,3,001kmの長距離伝送に成功した。
標準外径光ファイバは,実際に敷設するケーブル化の際に,既存の設備を流用することが可能で,大容量長距離基幹系通信システムの早期実用化が期待できるという。Beyond 5G以降では,新しいサービスにより爆発的に通信量が増加することが予想される。この成果は,Beyond 5G以降における多くの新しいサービスの普及を支える基幹系通信システムの実現に貢献するものだとする。
研究グループは今後,伝送距離やネットワーク構成が異なる光通信システムにおいて,早期実用化が期待できる標準外径新型光ファイバを利用した様々な実装形態を可能とするため,更なる伝送能力の向上を目指し,将来の大容量光伝送技術の基盤を確立していきたいとしている。