阪大,基板上のグラフェン特性を操作し特性も解明

大阪大学の研究グループは,多層グラフェンナノリボンをチャネルとした電界効果型トランジスタのキャリア輸送特性解析から,グラフェンナノリボンにおける金属・半導体特性の発現機構を解明した(ニュースリリース)。

これまで理想的な系における電子構造計算により,グラフェンナノリボンのキャリア伝導特性が,そのエッジ構造や幅の違いにより半導体や金属特性を示すことが予測されてきた。しかし,シリコンデバイス基板に組み込んだ実際のグラフェンナノリボンデバイスでは,理論的な予測とは異なり,構造に対して系統的なキャリア伝導特性の変化が現れないことが課題だった。

研究グループは,カーボンナノチューブ(CNT)をアンジップすることにより合成した単層グラフェンナノリボンを固体テンプレートとした化学気相成長法により,多層グラフェンナノリボンを作製した。

幅を15~25nmに制御しつつ,層数を変化させた多層グラフェンナノリボンをチャネルとした電界効果型トランジスタのキャリア伝導を計測した結果,数層(1~3層)グラフェンでは半導体的,多層(6~8層)では金属的な特性が観察された。

単層では,デバイス基板表面上に残留する不純物電荷により,局所的に高いポテンシャル障壁が形成されるが,多層では層間における電場遮蔽効果により表面ポテンシャルが平坦になる。単層グラフェンでは,不純物電荷の局所的なポテンシャル変調の影響を強く受けるため,キャリアは熱エネルギーの助けを借りてこの障壁を乗り越えるようにホッピング伝導する。

特に,ナノリボンのような細線形状ではチャネルを分断するように大きなポテンシャル障壁が形成されるため,伝導電子が局在化を起こし半導体的な特性を示す。一方,多層構造では層間の遮蔽効果により不純物電荷による電界が層数の増加と共に減衰し,最表層付近ではポテンシャルが平坦になり高い伝導度を有する金属的特性を示すようになる。

層数が5層付近を境に,キャリア輸送特性が半導体的から金属的に遷移する。この境界となる5層の厚みは,不純物電荷の電界に対する遮蔽長(~1.5nm)と良い一致を示した。このことから,実際のグラフェンナノリボンデバイスでは,それを取り巻く周りの環境効果の有無が,半導体・金属特性発現の支配要因となることを明らかにした。

研究グループは,この成果は,高速動作可能なトランジスタや高電流密度に耐える配線など,目的に応じたグラフェンナノリボン材料の応用・展開を加速する重要なマイルストーンだとしている。

キーワード:

関連記事

  • 理研,高効率な水電解水素発生触媒を発見

    理化学研究所(理研)は,白金ナノ粒子(PtNP)/炭素ナノマテリアル(CNM)複合体から成る高効率な水電解水素発生触媒を発見した(ニュースリリース)。 水素(H2)は,使用しても二酸化炭素(CO2)を排出しない次世代のク…

    2023.08.22
  • 京産大,多重折りたたみグラフェンの成果を発表

    京都産業大学は,多重折りたたみグラフェンについての理論計算の研究成果を発表した(ニュースリリース)。 紙や布のような層状の物質は,あまり伸び縮みはしないが,やわらかいために折りたたむことができ,多種多様なかたちを作ること…

    2023.07.11
  • 東北大,グラフェン単層膜のレーザーナノ加工に成功

    東北大学の研究グループは,フェムト秒レーザーを使って炭素原子1層分の厚さからなるグラフェン膜を,100nm以下の精度で加工することに成功した(ニュースリリース)。 グラフェンを使ったデバイスを社会実装に導くには,グラフェ…

    2023.05.19
  • 東大,ベンゼン環1個分の幅の最細グラフェンを合成

    東京大学の研究グループは,分子で作ったナノサイズの空間を利用することで,無数のベンゼン環が直線状に連結したポリアセンの合成に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。 ベンゼン環が直線状につながった構造をもつアセン類は,…

    2023.05.10
  • 北大ら,hBNの⼤⾯積化とグラフェン集積に成功

    九州⼤学,⼤阪⼤学,産業技術総合研究所は,均⼀な多層の六⽅晶窒化ホウ素(hBN)を合成し,それを⽤いて⼤規模なグラフェンデバイスの特性向上につなげることに成功した(ニュースリリース)。 グラフェンや遷移⾦属ダイカルコゲナ…

    2023.02.07

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア