電子情報技術産業協会(JEITA)の会長として,ソニーグループ副会長の石塚茂樹氏に代わり東芝会長兼社長の綱川智氏が会長に就任し,6月3日,就任会見を行なった。
会見で綱川氏は「我々は『ビフォーコロナ』の社会には戻れない」とし,JEITAの今後の取り組みと重点課題として,withコロナ・afterコロナの社会を構築していく構えを見せるとともに,そこでは社会的価値を創り出す力が企業価値を決定し,その達成のためには,業界の垣根を超えて会員を募ることが求められるとした。
JEITAでは会員制度に関する定款変更とベンチャー優遇特例制度の創設により,会員企業を従来のIT・エレクトロニクス業界のメーカーに限らず,IoTに関係する企業とスタートアップに広げている。具体的には,スマートホームの普及・啓発・市場拡大に向け,家電・IT通信機器分野のみならず,住宅や住宅設備機器,サービス等の住まいに関わる企業や団体が参画している。
こうした流れから,「JEITAは,電子部品や電子デバイス,電子機器やITソリューション・サービスを中核として,あらゆる産業を繋げるプラットフォームのような団体になりつつある」とし,これまでの標準化や課題解決といった取り組みのみならず,異なる知見や技術を持った者同士が連携することで,業界を超えた課題解決や新たな価値を共に創り出す「共創」の推進に注力すると述べた。
綱川氏はこの「共創」のテーマとして,事業創出や市場の活性化に繋がる取り組みとして,「5G利活用型社会デザイン推進コンソーシアム 」を昨年9月に発足させたローカル5Gのほか,供給不足が懸案となっている半導体においては技術開発だけではなく,今後は半導体ユーザー企業や関連産業とのコミュニケーションや連携を図りつつ,サプライチェーンの強化などにも取り組むとしている。
また,会員企業の目下のテーマだというカーボンニュートラルについては,対応次第では市場からの退出をも強いられると危機感を示した。工場やオフィスなどにおいてデジタルをフル活用することによって,エネルギーの有効活用や,産業・企業の活動全体を最適化するデジタルトランスフォーメーション(DX)のマイルストーンにもなることから,特に注力が必要な分野だとする。
サプライチェーンの100%カーボンニュートラル化を実現するためにはテクノロジーの活用が欠かせないとし,JEITAではデジタル技術を使った脱炭素化に向けた議論を行なうための横断的な新組織「Green × Digital」コンソーシアムを上期中に新設し,ルールや規制など,デジタルを使った今後の市場の在り方を議論していく。またこの組織の立ち上げに向け,5月1日付で「グリーンデジタル室」を設置し,専任の職員も配置した。
一方,DXにについては,JEITAが調査会社と共同で実施した調査において,日本企業でDXの取り組みを実践していると回答したのは約2割と,その遅れが鮮明になった。そこで,DXの目的を捉え直すとともに,ニューノーマルも見据えて経営トップが自ら関与してビジネス変革をリードしていくことが求められるとしたほか,会員企業がDXの中核的役割を果たせるよう,JEITAにおいてもデジタル技術を活用した新しい働き方への移行を進めてきたという。
具体的には,400を超える部会・委員会の会合をオンラインに移行するとともに,職員のテレワークを基本とするなどしたほか,オフィスも「リアルコミュニケーションによる共創を生み出す場所」として再定義し,リニューアルを敢行した。
綱川氏は最後に,JEITAではSociety5.0の実現とともに,日本経済のさらなる活性化やSDGsの達成に貢献することを目指し,政府や関係各所と密に連携しながら,事業を推進していくとした。