大日本印刷(DNP)は,微粒子製品を扱う企業向けに,顕微鏡画像によって,製品の粒子径や形状,表面の状態などを解析する「DNP粒子画像解析ソフト」を開発した(ニュースリリース)。
工業製品として使用される金属やセラミックスなどの微粒子について,径・形状・表面特性等によって,付加される機能にどのような違いが生じるかといった解析の重要性が増している。
こうした解析ニーズに対して,レーザー回折や光分散による粒度分布計では,アスペクト比が高い粒子の正確な粒径を測定できず,異形の粒子も解析できない。一方,微粒子製品を扱う企業の多くが採用している電子顕微鏡画像による測定は,画像から粒子を検出し,粒径や個数を測定するまでに長大な時間を要し,さらに目視で解析する作業者の熟練の技術が必要となる。
また,画像処理ソフトウェアを用いた粒子の測定は,画像処理技術の専門知識が必要になるほか,撮影条件が変わるたびに画像処理の設定調整が必要になるため,誰もが容易に使いこなせないといった課題があったという。
同社が印刷で培ってきた画像処理技術が活かされているというこのソフトウェアは,グラフィックボード(GPU)を搭載した一般的なPCで動作。電子顕微鏡画像を元にAIが粒子の検出と分類を行ない,その結果を画像・表・グラフで表示する。微粒子製品の解析の効率化と解析時間の短縮を実現し,熟練技術がなくても定量的なデータを取得できるとしている。
このソフトウェアは,電子顕微鏡画像から個々の粒子を検出。画像内部の,粒子がある領域とそれ以外の領域とを判定するために,AIを使用する。また,検出した個々の粒子に対して,粒子のタイプを自動的に分類。ソフトの利用者が形状や表面状態などのタイプが異なる粒子の一部をクラス分けし,そのデータを元にAIが全ての粒子に対して分類を行なう。
さらに,ソフトの利用者が,検出~分類を行なうAIに学習させることが可能だとし,AIの学習は,解析対象となる電子顕微鏡画像の一部を使用し,簡単な操作によって教師データを作成して行なうという。
今後同社は,微粒子製品を扱う素材や製品のメーカーをはじめ,多様な業種の企業や,大学その他の研究機関向けにこのソフトウェアを販売し,2025年度で年間5億円の売上を目指すとしている。