新潟大,世界最小のエネルギーで水を電解

新潟大学の研究グループは,世界に類を見ない超低過電圧で水を分解する高活性酸素発生触媒を開発し,世界最小のエネルギーで水を電解することに成功した(ニュースリリース)。

持続可能な脱炭素社会の実現への期待が急速に高まっている中,化石燃料に代わる新しいエネルギー源を獲得する方法として,再生可能エネルギーを利用した水電解による水素生成技術に高い関心が寄せられている。

水電解セルでは,水分解の理論電圧1.23Vに加え,酸素発生電極の過電圧(ηO2)と水素発生電極の過電圧(ηH2)に相当するエネルギーを反応に要する。高効率に水を電解するためには,高活性電極触媒を開発してηO2およびηH2を最小にする必要がある。しかし,現状ではηO2値が300mV程度と高いのが課題であり,高活性酸素発生触媒の開発が水電解による高効率水素生成技術の鍵となっていた。

研究グループは,多孔性ニッケル基板をチオ尿素と共に焼成処理することにより,窒化炭素に包含された硫化ニッケル(C3N4/NiSx)ナノワイヤーが基板上に析出することを見出した。

これを酸素発生電極として用いて,1.0M水酸化カリウム水溶液中で水電解を行なった結果,ηO2=32mVの超低過電圧で水が分解されることを実証した。これは,これまで報告されている世界最高水準の酸素発生電極の160mVと比較しても,格段に低い値となる。

NiSxナノワイヤーと電解質水溶液の界面に触媒活性サイトとなるニッケル酸化物(NiO(OH))層が形成され,基板から活性サイトまでの電子輸送が効果的に進行したため,高効率で水分解が達成されたと考えられるという。この機構を詳細に研究することにより,世界に先駆けて高効率酸素発生触媒の開発ガイドラインが提供されるとする。

研究グループは,開発した水電解セルと太陽電池を用いて,世界最高の太陽光水素生成変換効率を達成し,実用的な太陽光水素生成システムへの道筋をつけることを目指すとしている。

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