九工大ら,水と酸素で過酸化水素を生成する光触媒

九州工業大学,豊田工業大学,三菱ケミカル及び海外の研究機関らは,太陽光を利用して,水と酸素から過酸化水素を生成することができる高性能光触媒(Sb-SAPC光触媒)の開発に成功した(ニュースリリース)。

過酸化水素(H2O2)は次世代燃料電池の燃料として,更には水素に変わるエネルギーキャリアとして注目されている。しかし,現在の過酸化水素の主たる工業的製法であるアントラキノン法は,高純度な過酸化水溶液を得ることができる反面,高温高圧などの膨大なエネルギーコストに加え,高価な原材料や触媒が必要であるといった課題がある。

この課題を解決するため,太陽光を利用して酸素(O2)を還元することでH2O2を生成する過酸化水素の生成システムが注目を集めている。ただし,光触媒プロセスにおけるO2の2電子(2e-)O2還元反応(ORR)によるH2O2生成の低い性能と選択性は,生成効率を大幅に低減させる。

研究グループは,この課題を解決し,可視光照射下で水とO2の混合物中でH2O2を選択的にかつ高い効率で生成する「アンチモン単一原子配位固定化窒化炭素光触媒(Sb-SAPC,窒化炭素上に分散した単一Sb原子)」を開発した。

Sb-SAPCは,一定量のNaSbF6を60℃で超音波処理しながらエタノールに溶解し,続いて窒化炭素の原料のメラミンを加えて混合することで前駆体を調製し,この前駆体をN2雰囲気中で560℃で焼成することで得られる。

Sb-SAPCは,H2O2合成において420nm(可視光)の光照射下で17.6%という驚異的な量子収率(光の利用率)と0.61%という記録的な太陽光変換効率を達成した。研究グループは,この卓越した光触媒性能が,励起電子を蓄積したSbサイトでO2が関与したμ-過酸化物中間体を形成することにより,高効率に2電子還元反応を進行させてH2O2を生成することが大きな要因であることを明らかにした。

さらに,隣接するN原子で高濃度の正孔を蓄積することで水を酸化してO2を発生する。水の酸化によって生成されたO2は,ORRによりその場で急速に2電子還元されてH2O2を生成し,全体的な反応速度が向上するという。

研究グループは,単一原子サイトと窒化炭素ユニットの間の協調効果の発見は,エネルギー変換および環境浄化における光触媒反応のための様々な単一原子触媒を設計する際の新しい設計指針を確立するものだとしている。

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