EHT,一般相対論以外にブラックホール表現の余地

EHT(Event Horizon Telescope)は,アインシュタインの一般相対性理論を検証するためにEHTの観測で得られたM87巨大ブラックホールのデータを分析し,一般相対性理論のほかの重力理論でもM87のブラックホールを表現する余地が残されていることを解明した(ニュースリリース)。

ブラックホールでは異常なまでに中心に質量が集中することで,時空が大きく曲げられる。中心のブラックホールへ落ち込む物質は熱せられ光り始めるが,ブラックホールの「端」である事象の地平線を境に光や物質が逃げられなくなるため,ブラックホールは黒く見える。ブラックホールを理論的に表現するためには,質量,回転,そしてまとめてチャージと呼ばれる物理量のみが必要だと考えられている。

ブラックホールを表現する式は,アインシュタインの一般相対性理論だけでなく,物質やすべての粒子を小さなひものゆらぎとして記述する超ひも理論にヒントを得た重力理論も考えられるという。超ひも理論で表現したブラックホールは,基礎物理学に対して新しい場を追加する必要があるため,一般相対性理論で表現した場合と比べてその大きさや時空のゆがみ具合いが観測可能なほど変化する。

EHTによって2019年に発表されたM87巨大ブラックホールのシャドウの画像は,2015年の重力波の測定に続き,ブラックホールが実在することを証明する最初の実験的証拠となった。今回,EHTの研究グループは,楕円銀河M87の中心にあるブラックホールの観測データと,これらの異なる重力理論が適合するかを初めて調査した。

その結果,M87の観測データは,一般相対性理論と見事に一致し,超ひも理論に基づく重力理論ともある程度一致していることが分かった。現在のところ,M87のブラックホール・シャドウの大きさからは,一般相対性理論以外の重力理論の可能性を否定することはできないが,今回の計算により,これらのブラックホール解の有効範囲を制限することができたとしている。

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