産総研ら,電極用導電性シリコーンゴムを開発

産業技術総合研究所(産総研)と日本ゼオンは,単層カーボンナノチューブ(CNT)の効果的な添加により高導電性を付与し,神経調節療法用医療機器の電極パッド等に適応可能な導電性シリコーンゴム複合化材料を開発した(ニュースリリース)。

医療用ウエアラブルデバイスの生体電極センサーには,皮膚との密着性を高めるための柔軟性に加え,安定した導電性が要求される。また,製品として広く展開するには,低コストで高耐久な導電性シリコーンゴムの製造方法も課題となっている。

開発した複合材は,シリコーンゴムに市販の導電性フィラーと少量(フィラー全体の1~5wt%)の単層CNTを添加して高分散化したもので,高導電と柔軟性が両立できる。CNT配合品は導電性カーボンブラックと比較すると添加量を少なくできるため,硬度も大幅に低くなった。

生体電極は,皮膚からの電気信号を受信し,皮膚へ電気信号を入力するため,電極の厚み方向の体積抵抗率の低さが要求される。また,着用者の動きによる接触の仕方で抵抗が変化しないように,厚み方向での体積抵抗率のばらつきが小さい材料が求められる。

そこで,市販の導電性フィラーのみを用いたシリコーンゴムとの複合材料(100/0品)の一部を単層CNTに置き換えることで(99/1,95/5品),体積抵抗率のばらつきを2/3程度に抑制できた。

シリコーンゴムは有機系ゴムに比べ耐熱性や耐水性に優れるものの,イオン性不純物に対して弱く,ゴムを構成するケイ素–酸素間の化学結合が切断されて短期間のうちに分子量が低下する。

この切断が進行すると,物性の劣化に加え,導電性フィラーの接触状態が変化し体積抵抗率が変動するが,今回開発したCNTシリコーンゴム複合材料により,耐久性の高い導電性シリコーンゴムを作製することができた。

導電性シリコーンゴムは広く使われているが,今回開発した複合材料は,特に医療用ウエアラブルデバイスの電極パッドとして期待される。このパッドは,抵抗値は金属板より高いものの,ゴム特有の柔軟性を生かし,体への密着性が高いため,身体に触れたときの不快感の低減に役立つとする。

日本ゼオンは,開発したCNTシリコーンゴム複合化技術を用いて,母材ゴムにCNTをあらかじめ混練したマスターバッチを作製した。さらに,米シリコーン分散液メーカーと共同で高濃度ゴムコンパウンドを開発した。このコンパウンドは腕時計形の医療用ウエアラブルデバイスの電極パッドに採用されているという。

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