東北大ら,超伝導転移温度が高くなる原因に新知見

東北大学と米スタンフォード線形加速器国立研究所(SLAC)らは,層状銅酸化物において長年の謎であった超伝導転移温度が高くなる原因の解明に光明を見出した(ニュースリリース)。

1986年に,層状構造を持つ銅酸化物において超伝導が発見されてから,高い温度で超伝導状態となるメカニズムについて,精力的な研究が続けられているが,超伝導転移が高くなる原因については,現在でも結論はでていない。

この問題に対する一つの有力な説に,「対密度波(pair density wave; PDW)」の形成がある。対密度波は,超伝導を担う電子対の振幅が空間的に変調している特殊な状態だが,その存在を決定するには,①物性が二次元性を示すこと,②電荷密度波(charge density wave; CDW)とスピン密度波(spin density wave; SDW)が共存すること,③電荷密度波の波数がスピン密度波の波数の2倍であることを実験的に示すことが必要となる。

そこで,研究グループは,214系銅酸化物高温超伝導体La1.87Sr0.13Cu0.99Fe0.01O4(LSCFO)を研究対象として単結晶試料を合成し,この試料に対して主として電気抵抗測定と共鳴軟X線散乱(resonant soft x-ray scattering; RSXS)実験を行なった。その実験により,超伝導電子対の振幅が空間変調した状態である,対密度波状態の形成を示唆する結果を得た。

また対密度波状態は,電荷密度波の形成とともに徐々に誘起され,電荷密度波の相関長が,層内の格子間隔のおよそ8倍を超えた温度から出現することがわかった。この結果により,対密度波状態と電荷密度波状態の関係が明らかとなり,超伝導転移温度が高くなる原因には,電荷の自由度が関わっていることがわかった。

研究グループは今後,超伝導転移温度の高い銅酸化物高温超伝体でも同様の手法で対密度波を観測し,電荷密度波と超伝導の関係を系統的に調べることにより,高い超伝導転移温度の原因の解明が期待されるとしている。

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