東大らの観測プログラム,新規宇宙望遠鏡で採用

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)ら国際研究グループが提案していた「COSMOS-Webb」が,ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)で実施される観測プログラムの一つに選ばれた(ニュースリリース)。

これは,与えられる208.6時間の観測時間を使って,ろくぶんぎ座領域付近にあるCOSMOS フィールドと名付けられた天域の観測を行ない,近赤外線で50万個の銀河を調べるほか,中間赤外線で新たに3万2千個の銀河を調べるプログラム。

JWSTは,ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の後継として米航空宇宙局(NASA)が中心となり開発を進めてきた望遠鏡で,2021年10月31日の打ち上げと2022年からの科学観測の開始が予定されている。サイクル1と呼ばれるJWST最初の年の観測に対しては,1000以上の観測提案が寄せられ,そのうち286件の観測プログラムが選ばれた。

この観測では,JWSTの近赤外線カメラを用いて空の0.6平方度(満月3つ分の広さ)を調べると同時に,中間赤外線装置でより小さな領域の0.2平方度をマッピングする予定。この観測で,主に3つの目的の達成が期待されている。

1つ目は,ビッグバン後40万年から10億年後の間に起きた宇宙の再電離の時代に焦点を当てたもの。宇宙は誕生してすぐの高温状態から,膨張するにつれ徐々に温度が下がっていきプラズマ状態のガスが結合して中性状態となり,宇宙の晴れ上がりが起きた。しかし,その後再びガスが電離されて宇宙全体がプラズマ状態になった。

この宇宙再電離は,おそらく一度に引き起こされたのではなく,小さな領域で局所的に起こっていったと考えられている。COSMOS-Webbでは,この局所的な再電離バブルの規模を明らかにすることを目的としている。

2つ目は,中間赤外線装置を用いて,宇宙初期に既に成熟していたと考えられる,大質量銀河を高赤方偏移の遠方宇宙で探索すること。ハッブル宇宙望遠鏡は,こうした銀河の例を見つけているが,このプログラムでは,なぜ銀河がそこまで早く進化したのかを理解するため,高赤方偏移の遠くて昔の宇宙で,こうした事例をさらに見つけて詳細な研究を行なう。

3つ目は,弱い重力レンズ効果と呼ばれる手法を利用してダークマターの地図を作成し,ダークマターが銀河の進化に与えた影響を調べようというもの。重力は見ることの出来ないあらゆる物質に影響を与えるため,銀河の周りの僅かな光の歪みを利用してダークマターの量を推定することができるという。

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