立命大ら,隕石中にCO2に富む液体の水を発見

立命館大学,京都大学,東京工業大学,北海道大学,高輝度光科学研究センターは,炭素質コンドライトと呼ばれる隕石(サッターズミル隕石: Sutter’s Mill)の鉱物の中に,X線ナノCTおよび低温下での透過型電子顕微鏡を用いた分析により,鉱物中に閉じ込められた二酸化炭素(CO2)に富む液体の水(CO2に富む流体包有物)を世界で初めて発見した(ニュースリリース)。

分析では,まず隕石の薄片中に方解石の粒子を探した。このような方解石粒子を含む30μm程度の物体を集束イオンビーム(FIB)を用いて切り出した。これらのX線ナノCT撮影を,大型放射光施設 SPring-8のビームラインBL47XUにおいて行ない,その3次元内部構造を1画素が約60〜100nm いう超高空間分解能で得たところ,数ミクロンよりも大きな包有物を方解石中に多数見出すことができた。

一方,方解石中には小さなナノメートルサイズの包有物(ナノ包有物)が無数に存在していることもわかった。このような小さな包有物の中身を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察を行なった。もしその中に水が入っていると,水は凍って結晶となり,電子線回折によって検出できる。

低温ステージを用いて着目したナノ包有物の電子線回折図形を撮った。すると,常温(20℃)でみえるホストの方解石結晶の回析スポットに加えて,低温(-100℃)で新たな回析スポットが出現した。その位置から,これらの回折スポットはH2Oの氷ではなく,CO2の氷あるいはCO2ハイドレートと呼ばれる氷であることがわかった。

この流体包有物は太陽系形成時のCO2を含む氷に由来すると考えられるという。 このような氷は太陽からかなり離れた低温領域(CO2が氷として存在できるCO2スノーラインの外側)で形成されたもので,この隕石をもたらした小天体(母天体)自身もこのような低温領域で形成されたと考えられる。

この領域は木星の形成領域よりも外側に位置することから,太陽系形成当時にこの隕石が木星の外側ででき,その後の木星の軌道変化に伴なって現在の小惑星帯(木星軌道の内側にある)に移動したという,最近のダイナミックな太陽系形成モデル(理論)の物質科学的な証拠だとする。

炭素質コンドライトは,初代はやぶさが採取したサンプルとは異なる。一方,はやぶさ2サンプルは炭素質コンドライトあるいはその類似物と考えらえており,これから始まるはサンプルの分析においても,同様に液体の水が見いだせるかもしれないとしている。

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