群大ら,リチウムイオン実電池の反応分布を測定

著者: sugi

群馬大学,高輝度光科学研究センター,フィンランド ラッペーンランタ大学,ヘルシンキ大学,Akkurate.Oy,米カーネギーメロン大学,ノースイースタン大学は,大型放射光施設SPring-8の高輝度・高エネルギー放射光X線を用いたコンプトン散乱実験から,充電中の円筒型リチウムイオン実電池の正極内で電極反応の自己組織化パターンの観測に成功した(ニュースリリース)。

リチウムイオン電池の性能を劣化させる要因として,電極内における不均一なリチウム反応分布の発生がある。一般に電極は複雑な三次元構造を持ち,その反応分布の発生メカニズム詳細は未だ完全に理解されていない。

高エネルギー放射光X線を利用するコンプトン散乱法は,電気化学デバイス内部の反応を非破壊で測定することができ,軽元素に対しても十分な測定感度を持つ。研究では,市販の円筒型リチウムイオン電池にコンプトン散乱法を適用し,充放電下での電池内部の反応を測定した。

コンプトン散乱法は,100keV以上の高エネルギーX線を使用する。高エネルギーX線は高い物質透過能を持つため,非破壊で物質内部の反応を測定することができる。研究グループは,SPring-8の高エネルギー非弾性散乱ビームラインBL08Wにて市販の円筒型リチウムイオン電池を充電・放電させながら,電池の中心方向に沿って高い空間分解能でコンプトン散乱X線エネルギースペクトルを測定した。

測定されたコンプトン散乱X線エネルギースペクトルに対し,以前,研究グループが開発したSパラメータ解析法を適用することでリチウム反応分布を得た。

得られたリチウム反応分布を詳細に解析したところ,充放電時に得られたSパラメータが時間とともに振動することがわかり,パラメータの時間的・空間的な振動成分を抽出することで電極反応の自己組織化パターンを観測した。さらに振動成分をフーリエ解析したところ,この振動の時間変化は充電曲線の振動と対応し,振動成分の波長は電極活物質のサイズに関連することがわかった。

今回の成果は,高エネルギー放射光X線が物質に対し高い透過性を示すことと,コンプトン散乱法が軽元素に対しても十分な感度を持つ測定手法であることから得られたもの。大型のリチウムイオン電池では,電極の大面積化により電極内で不均一なリチウム反応分布の発生が問題となっており,この研究で得られた成果が電極反応の基礎的な理解をもたらし,高性能なリチウムイオン電池の開発に資することが期待されるとしている。

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