東大,1つのレーザー加工穴からビッグデータ取得

東京大学は,超短パルスレーザーの照射による物質の除去深さの入射光強度依存性について,たった一つのレーザー加工穴から数十万点のデータを一度に求めることができる新たな手法(フルーエンスマップ法)を開発した(ニュースリリース)。

レーザー加工を設計・制御可能な技術として産業応用するには,レーザー加工の際に生じている複雑な物理的・化学的現象の把握と,その原理の解明が不可欠となる。

最近の研究により,機械学習や大規模第一原理計算との組み合わせが,その実現に向けた強力な手法となることも明らかになってきた。このためには,強度,波長,パルス幅といった,レーザー光のさまざまな条件に対して,加工穴の深さや形状などに関する大量のデータを収集することが必要となる。

しかしながら,レーザー加工は不可逆な現象であるために,実験には大量のレーザー加工穴の作製とそれらの測定が必要となる。そのため,実験可能な回数が限られ,系統的かつ大量の学習データ(ビッグデータ)を取得することが困難だった。

今回研究グループは,ビームスポット内での場所ごとのフルーエンス(局所フルーエンス:一つの光パルスのエネルギーをそのビームの面積で割った値)が,スポット近傍ではゼロからあるピーク値の間で連続的に変化していることに着目。レーザー加工によって生じる1つの加工穴の各場所における加工深さ(局所加工深さ)は,入射したレーザー光の各場所における局所フルーエンスを反映したものになることが予想された。

この依存性こそが,「どれくらいのレーザー光強度で物質の破壊が生じるのか」という情報であり,これを正確に把握できれば,多数の加工穴を作製して実験を行なった場合と同等な情報を得ることができる。

これを実現するため,加工面におけるレーザー光の強度分布は自作の高精細ビームプロファイラで測定し,加工穴の形状をレーザー顕微鏡で測定した。それらの結果を,数値処理を用いて正確に重ね合わせることにより,各場所における局所フルーエンスと局所加工深さの関係を明らかにした。この結果から,局所フルーエンスと場所ごとの局所加工深さの関係のヒストグラムを作成して可視化したものが,今回開発したフルーエンスマップとなる。

これは,たった一つの加工穴の情報から,約25万点のデータを抽出していることに相当しており,データの収集効率が劇的に向上した。この結果より,レーザー破壊閾値が一目でわかるほか,これまでに知られていなかった加工状態の存在も示唆された。

この手法によって1つの加工穴全体で2次元的な多数の情報を高い効率で取得することが可能となったとしている。

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