愛媛大学,理化学研究所,スイス連邦工科大学チューリッヒ校は,表面にDNAを密生させた金ナノ粒子を用いた,分子検出手法を開発した(ニュースリリース)。
直径数〜数十nmの金ナノ粒子の分散水溶液は赤色を呈している一方で,外部刺激・操作によって金ナノ粒子を凝集させると,水溶液は赤色から薄青色に変色する。研究グループはこれまでに,金ナノ粒子がターゲット分子依存的に示す凝集を,溶液色変化や暗視野顕微鏡下での輝点色変化などで評価する手法を開発してきた。
しかしながら,ターゲット分子不在でも金ナノ粒子が凝集してしまうことがあり,そのような場合は分子検出が困難だった。例えば,抗生物質の1種であるカナマイシンは,金ナノ粒子の非特異的凝集を起こすことが知られているという。
今回,金ナノ粒子表面にDNAを密生(DNAブラシ)させることで,そのような非特異的凝集を抑制することに成功した。さらに,特異的分子認識能を有するDNAアプタマーをDNAブラシを介して金ナノ粒子に修飾することによる分子検出手法を開発した。
ターゲット分子存在下ではDNAアプタマーが解離し,金ナノ粒子の塩安定性が減少することで,ターゲット分子依存的なナノ粒子凝集を形成することが可能になる。検出例として,カナマイシン存在下において,ホルモン分子の1種でもあるエストラジオールを検出することに成功した。また,スマートフォンを用いた簡易型暗視野顕微鏡によるナノ粒子凝集評価および分子検出ができることも示した。
研究グループは今回の成果について,環境中のホルモン分子の簡易検出への応用などが可能になるとしている。