神戸大ら,全天球カメラでクジラの行動を観察

神戸大学,ノルウェー海洋研究所,東京大学,英セントアンドリュース大学は,全天球カメラを動物に装着し,水中におけるザトウクジラの休息行動を明らかにした(ニュースリリース)。

海洋動物の生態を直接観察することは難しいが,近年ではバイオロギング(Bio-logging)手法を使った研究が進められている。

バイオロギングとは,動物に装置を取り付け,彼らの行動や周囲の環境情報を記録する手法。特にカメラは,装着個体の周辺環境を視覚化できるため,強力なツールとなっている。しかし,これまでのカメラには画角が狭いという問題があり,広範囲を撮影できるような広角レンズカメラが必要とされていた。

研究の対象動物であるザトウクジラは,バイオロギング手法を用いることで採餌行動に関する知見は増えている一方,動物の生態を理解するために重要な情報であるにも関わらず,休息に関する知見はこれまでほとんどなかった。そこで研究では,動物装着型の全天球ビデオカメラ(空中画角360度,水中画角270度)と行動記録計を使い,ザトウクジラの休息行動の解明に取り組んだ。

今回,リコーより全天球カメラ「THETA」を基盤の形で提供してもらい,それをエポキシ包埋し耐圧防水加工を施すことで,これまでに無い動物装着型の全天球カメラを開発した。記録計一式をクジラに装着するために,全天球カメラ,行動記録計,電波発信機,浮力材,吸盤が一体となった「タグ」を作成した。

小型のボートでクジラに接近し,約6mのポールを使って吸盤でクジラにタグを取り付けた。吸盤で装着されたタグは,数時間後に自然に脱落し海面に浮かんでくるので,タグに組み込まれた発信機の電波を頼りに回収した。タグからは約1時間のビデオデータと約11時間の行動データを得た。

その結果,タグ装着個体は水中で漂っていたことが示唆された。アザラシ類やマッコウクジラ,アカウミガメなどは水中を漂いながら休息することが知られていおり,このザトウクジラも水中で漂いながら休息していたことが考えられた。水面ではなく水中で漂いながらの休息行動がこの研究で明らかとなった。また,全天球カメラを使うことで,クジラは水中で単独ではなくグループで休息していたこともわかった。

広角レンズカメラによるタグ装着個体の周辺の環境情報から,競争相手,協力個体,捕食者などの他個体の有無や,餌の分布や密度などの餌環境が明らかになると考えられる。この研究で,全天球カメラの有用性を示すことができた。研究グループは,観察することの難しい動物の生態解明のためにも全天球カメラの活躍が期待されるとしている。

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