東京都市大学と東京工業大学は,青色発光ダイオード(LED)と独自開発した太陽電池を用いた光無線給電技術を開発した(ニュースリリース)。
研究グループは,室内照明や薄型ディスプレーのバックライトに組み込まれている青色発光ダイオード(LED)を用いて離れた場所に電気を送る技術を開発した。
現在の最も代表的で一般的な太陽電池は,半導体のシリコンで作る。シリコンは電気を流すために光の粒(光子)に必要なエネルギーである禁制帯幅(バンドギャップ)が約1.1電子ボルトの半導体で,波長が長い赤外線を電気に変換する性質がある。
一方で,今回用いたペロブスカイト型半導体の原料,メチルアンモニウム臭化鉛(CH3NH3PbBr3)はバンドギャップが2.3電子ボルトで,赤外線より波長が短く高エネルギーの青色光を電気に変換することができる。
今回,青色LEDとペロブスカイト型太陽電池を約50cm離して設置し,青色光を無線で送って電気に変換する実験を行なった。その結果,太陽電池に当たった光エネルギーの20.2%を電気に変換することに成功した。
今回用いたペロブスカイト型太陽電池は,脆く割れやすいシリコンでできた太陽電池と違って軟らかく,曲面にも貼り付けることができる。また,シリコン太陽電池の製造には真空装置が必要ですが,この太陽電池は大気中で製造できる。
ただ,現在のところ長時間使用すると発電能力が低下するという欠点があるため,今後は,一層の長寿命化と変換効率の向上を目指した研究を進める。さらに,電機メーカーと共同することにより,指向性の高い青色LEDの向きを自動車や携帯情報機器など移動体の動きに合わせて追尾できるシステムの開発を進め,10年以内の実用化を目指すとしている。